第14話 聖剣グランマルスと魔剣シーズニング・後編

 「僕は…何か良く無いものを引き寄せる力とか呪いでもあるのだろうか?」


 僕とリットの目の前には、確かにバディホーンブルがいる。

 ただし、どちらも瀕死の重傷を負っていて、それをやったのが迷宮にしかいないと言われたミノタウロスだった。


 「あれはミノタウロスか…?」

 「えーっと…? まさか食べる気かな?」

 「だとしたら…共喰いになるなw」


 まぁ、流石にミノタウロスともなると、マーダーグリズリーと同等か…それ以上の敵になる。

 マーダーグリズリーは知能がそれほど高く無く、本能剥き出しだったので向かって来たので何とか倒せたけど…ミノタウロスは知性の高い魔物と父さんの本に書いてあったから、楽には行かないだろう。


 「お兄ちゃん、どうするの?」

 「流石に相手が悪い…僕達には気付いてないみたいだし、奴の注意がこっちに向く前に離れるよ!」


 僕達は小声で話すと、ソッとその場を立ち去ろうとした。

 ところが突然、魔剣シーズニングがガタガタと音を立てて振動をし始めた。

 僕は聞こえたらまずいと思って、魔剣シーズニングを押さえた。

 ミノタウロスを確認するが…どうやら聞こえてはいなかった。

 僕は魔剣シーズニングを押さえ込みながら、その場を離れようと移動していると…

 魔剣シーズニングから、よく分からない言語がミノタウロスに向かって放たれたのだった。

 そして運悪く…ミノタウロスはこちらに気付いて振り返った…のだが、明らかに怒っている表情だった。


 「この剣…本当に呪われた剣じゃ無いだろうな?」

 「お兄ちゃん…あの敵、気付いたよ!」

 「だな…逃げれるなら、隙を見て逃げよう。 無理な場合は…」

 

 ミノタウロスは、巨大な斧を構えると…その場からフッと姿を消した。

 すると、いつの間にか僕の背後に来て居て、僕の頭上に斧が振り下ろされていた。

 僕は反応出来なかったが、リットはそれに対応していて…聖剣グランマルスで受け止めていた。

 だが、力の差は歴然で…リットは徐々に受けきれなくなっていた。

 それを黙って見ている僕では無い!

 僕はシーズニングを構えて、ビネガーセイバーで脇腹を突いた。

 すると、攻撃している時にあの俊敏な動きは出来なかったみたいで…僕の攻撃に剣先は脇腹を貫いていた。

 そしてリットの攻撃が止んでから、ミノタウロスは瞬時に距離を取った。


 「リット、ありがとう! あの速さに反応出来なかった。」

 「あんなに早いと逃げられそうも無いよね?」

 「もちろん、迎え撃つよ!」

 「うん!」


 どの道、あの速度から逃げられるという事はまず無い。

 なら、少しでも確率のことを考えて戦う方法を選んだ。

 すると、ミノタウロスが何か言葉を発して来た。


 『グブッフッフッフ…なツかしキ気配ヨのォ! しーズニんぐのイまのアルじはキサまか?』

 「まさか…喋れるのか⁉︎」

 『グブッフッフッフ…ワれをソコイらの者トイッシょにスるな! わレハ、魔王さマのハイかノヒとり…ゔぁルギすたイガーだ‼︎』

 「は? え? 何て?」

 『ワれのナは、ヴァるぎスたイガーだ‼︎』


 よくは聞き取れないけど、名前はヴァルギスタイガーという名前らしい…が?


 「草食獣の牛の癖に、肉食獣の虎の名を語るな!」

 

 僕はリットに頷くと、リットは素早く移動した。

 僕はシーズニングでラードセイバーを発動した。

 すると、あの時の声が再び響いてきた。


 【推奨・性質変化で可燃性に移行、濃度上昇・密度上昇・属性変化=火属性】


 僕はシーズニングに言われた通りのスキルを発動した。

 魔力量がゴッソリ持って行かれた感じがするが、意識を失うまででは無かった。


 『ナんだト? ワれを愚弄スルのか?』

 「だってどう見ても名前負けだろ? 牛の癖に虎なんて…」


 背後に移動したリットは、斧を担いでいる腕を狙って攻撃をした。

 これで腕を切り落とせる…と思っていたが?


 『キヅかなイとオモってイタのか? コざかシィ!』

 「くっ!」


 リットの一撃は、ミノタウロスの斧で防がれていた。

 そしてミノタウロスの意識がリットに向いた瞬間に、任意出現で刀身から油を放出してミノタウロスにぶっ掛けた。

 何度も何度も放出を続けていき…ミノタウロスの足元には大きく油の池が広がって行った。

 

 「どうだ? 動けるものなら動いてみろ?」

 『コしゃくな真似ヲ…!』

  

 ミノタウロスは移動しようと一歩踏み出すと、油で滑って地面に勢い良く倒れたのだった。

 その拍子に斧は油で滑って手から離れていた。

 僕はトリガーを引いて着火すると、刀身はフレイムセイバーに変化した。

 そして剣先を油に付けると、炎は勢い良くミノタウロスを包んで行った。


 『きサマ…ヒきょうナ手バカり使いヤガって、セいせいドウドウとイウ言葉ヲしらんのか⁉︎』

 「12歳の子供に正々堂々を求めるなよ! まともにやり合っても勝てそうもないから、こんな手を使っているんだよ‼」

 

 いつもの油とは違い、かなり濃度を上げて加熱性にしているのに…炎に包まれていても会話が出来るほどにミノタウロスは強靭な皮膚をしていた…のかな?


 『グブッフッフッフ…こノ炎も、キエれば反撃ノちゃんスがクル…ソノ時がオマえらのサイ後だ!』

 「ざ~んねん! 燃料追加すれば火は消えないよw」

 

 僕は更に油をミノタウロスに向けて放出した。

 赤い炎は、紅蓮の炎に変化して勢いが増していた。


 「どう? 僕の魔力はまだまだあるから、牛が死なない限り消える事は無いよ!」

 『グワワオォォォオォォォォォォオォォ!!!』


 悲鳴の感じが変わり、炎の中でも動きが無くなったので…鎮火するまで待って過ごした。

 火が完全に鎮火すると、ミノタウロスは正座をするような形で動かなかった。

 皮膚は溶けて肉や血管が浮き出ている箇所が幾つかあった。

 リットは確認しようとして近付こうとしていたが、僕はリットの肩に手を当てて止めた。

 そして濃度上昇した塩と水を合わせた、ソルトウォーターセイバーを発動してから、任意出現でミノタウロスに向かって塩水を放出した。

 その塩水が大量にぶっ被ると、ミノタウロスはもがき苦しんでいた。

 それもそのはず…火傷を負った皮膚に塩水は普通に激痛だからだ。


 「やっぱり気絶したフリをしていたか…」

 『キサま、ナぜわかった⁉︎』

 「知能のある魔物なら、こうして油断を誘うと思っていたからね。 …っていうか、僕の場合でも同じ行動をするからね。」

 『・・・・・・・・・』


 ミノタウロスは、呆けたふりをしながら手に持った斧を投げ付けた。

 その斧の軌道は、リットに向かって飛んで行った。

 リットは油断をしていて対処が出来ずにいた。


 「リットーーー!!」

 

 僕が叫ぶと、聖剣グランマルスは光だしてリットの体を全身に包むと斧を弾いた。


 『バかな! キさまの剣ハイッタい⁉︎』

 「リット!」


 僕はリットに合図をすると、リットはミノタウロスの背後に、僕は正面から向かって行った。

 そして僕達の狙う場所は1つ…体勢を立て直す前に僕とリットは、ミノタウロスの首を狙って剣で斬り…その首を飛ばしたのだった。


 「魔王の配下と言うだけあって…強かったな。」

 『グブッフッフッフ…我ハ、魔王さマのハイかの…』

 「まだ喋れるのか…」

 『カんぶノ1リ…ホキュ…』

 

 ミノタウロスは最後まで言えずに死んで消滅して行った。

 討伐証明が何も残らない…と思っていたら、ミノタウロスが使っていた斧が地面に刺さっていた。

 僕は斧をマジックバッグに入れた。

 そして先程のバディホーンブルの元に行くと、瀕死だった2匹は死んでいた。

 僕とリットは討伐証明の角を回収してから、解体して肉を確保した。

 そして雌の方を解体している時に、内臓を切ったら白いものが飛び散って口の中に入ると、エクストラ調味料・牛乳を覚えたのだった。


 「リット、帰るけど良いか?」

 「うん、報告しないといけないからね!」

 

 僕とリットは、冒険者ギルドに帰還した。

 そしてライラさんに今日あった内容を話すと、ギルドマスターの部屋に通されたのだった。


 「ギルマスに報告があります! 実は…」

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