第1話 精鋭

冠城グループ、冠城カンパニー社長室にて


 「会長さんお久しぶりです」


 そう声を掛けたのは着物を羽織っている、70代前後の女性。


 冠城は吸っていた葉巻をため息をつきながら灰皿に消すと目の前にいる女性に向かって話し出す。


「お久しぶりです君嶋先生、話しは聞いていますか?」


「もちろん聞いております、大変でしたね会長さん」


 先生と呼ばれている女性の名は霊媒師、君嶋哲子。

テレビや雑誌などで何度も取り上げられるほどの有名人であり、かつてテレビ番組で何度も除霊をしており

日本で一番有名な霊媒師である。


 冠城は自身が20歳の頃に君嶋哲子と出会い彼女の力に感銘を受け、それ以来40年来の付き合いである。


「君嶋先生改めてお願いがあります、鬼灯グランドホテルにいる悪霊たちを君嶋先生に除霊していただきたい、どうかお力を貸していただけないでしょうか」


 イスから立ち上がり頭を下げる冠城。

 

「会長さんは昔から頑固ですね、リゾート地計画を辞めればいいだけの話なのに、あなたは昔から一度決めたら頑なにそれを曲げない、今回も相当な資金を投じているようですが、あなたの性格が邪魔をした結果、私がここにいるというこですね」


 冠城は頭を下げたまま佇んでいる。


 君嶋は黙っている冠城に喋りかける。


「頭を上げてください会長さん、どうぞ座って一服してください」


 冠城は頭を上げイスに座ると葉巻に火をつけるとゆっくりと葉巻を燻らすと、君嶋が喋り始める。


「さて本題に入りましょう今回の件、正直私一人ではどうにも出来ません」


 冠城は焦った様子で君嶋に言う


「君嶋先生、私にはあなたしか頼れる人はいないんです、あなたの力は十分に知っているつもりです、君嶋先生ならどうにか出来ないのでしょうか」


「無理ですね会長さん、私は実際にあそこへ行ってきましたがあそこにはとてつもない数の悪霊たちが取り憑いています、私一人ではどうにも出来ません、それにあの中には私が今まで出会っあったことのない桁外れの化け物がいます、だから私一人ではどうにも出来ません」


 冠城は焦った様子で葉巻を消し、机を叩きつけ、口調が変わる。


「じゃあどうすれすばいいんだ」


「落ち着いてください会長さん、私は何度も言っているでしょう、私一人ではどうにも出来ないと、だから提案です、私は日本中にいる霊能力者を知っていますだから彼らに声を掛けてみます、ただ並の霊能力者では太刀打ちできません、そこで会長さんには報酬を用意していただきたい、いくらでも結構ですが少なすぎると断る者もいるでしょうだから会長さんにそれなりの額を用意して貰いたい、もちろん私も参加させていただきます」


 君嶋の話を聞き落ち着きを取り戻し、納得した様子の冠城。


「分かりました報酬の事は任してください、ですが何人集めるつもりですか?」


「私が知る限りあれを倒せるのはそう多くはいません、だからと言って数で攻めるのも愚策、なので私が厳選した19人、私を含めた精鋭20人で行くつもりです」


「分かりました、先生を信じます、後は任せました」


 冠城は安心した表情を見せ、君嶋哲子は社長室を後にした。



ーーーーー東京都都内某所ーーーーー


 雑居ビルの屋上で眼を閉じ何やら集中している金髪の青年が一人でおり、誰かと無線機で話している。

そしてもう一人、黒いパーカーにフードを被っており右腕に包帯を巻いている銀髪の青年が街を駆け回っている。


りょうそこの路地を入って右に曲がったぞ」


 金髪の青年が陵という男に指示を送っている。


「了解、このまま行き止まりまで追い詰める、指示してくれ隼人はやと


 隼人はさらに集中して、陵に指示を送る。


「OK、じゃあそこを左に曲がって、そしたら突き当たりのビルに登れ、そして登ったら真正面にあるビルに飛び移れ、その後は右にあるビルの路地に降りろ、そしたらチェックメイトだ」


 陵はビルの階段を駆けのぼり、隼人の指示通りビルに飛び移り、右のビルの路地に飛び降りると、そこにはボロボロのスーツを着ており、血だらけの顔、右腕が千切れかけており、人とは思えない姿をしている。

 

「そこまでだ悪霊、観念して地獄に行け」


 男はがらがらの声で怒り狂いながら喋り始める。

 「何なんだテメェらどこまでも追いかけてきやがって、そもそも何で俺が見えるんだ」


 陵は男に指を指しながら言う。


「ごちゃごちゃうるせーなさっさっと死にやがれ」


「いや陵、そいつ死んでっから」


「うるせぇ隼人、分かってるよ一度言ってみたかったんだよ」


 陵は右腕の包帯を外しながら隼人に文句を言っている。


 ボロボロのスーツの男がさらに激昂し陵に向かって暴言を吐く。


「さっきから誰と喋ってんだ、殺すぞクソガキがあぁぁぁぁぁ」


 そう言うと男は陵に襲いかかる。


 陵は包帯を取りきると、右手は火傷のような跡を負っており、その手を男に向ける。


「誰って世界最高の相棒だよ」


 男に右手が触れると凄まじい光が起こり男は右手に飲み込まれていく。


 男の姿が跡形も無く消え去ってしまった。


「隼人終わったぜ、合流しよう」


 隼人は笑いながら陵をからかう。


「照れるな世界最高の相棒か、言ってくるぜ相棒」

 

「うるせぇ早く合流するぞ」


 すると隼人の携帯が鳴る。


「ちょい待ち、電話掛かってきた、アレ知らねぇ番号だ、もしもしどちら様ですか」


 隼人は5分ほど話した後、陵と合流した。


 合流してすぐ陵は隼人に尋ねる。


「電話誰からだったんだよ」


「なんか極円六真幻法院きょくえんむしんげんぽういんっていう団体からだった、力を貸してほしいって、報酬は弾むからだってさ」


 陵は少し考え込み何かを思い出したかのように喋り始める


「たしかそれって君嶋哲子がやってる団体だったよな」


 隼人も思い出したような顔をしている。


「そうだよあの君嶋哲子だよ、小さい頃よくテレビで見てたな」


「あぁ、日本一有名な霊媒師だ、で隼人、力を貸してほしいって言ってたんだよな」


「そうだよ、どうする陵?」


 陵は笑みを浮かべながら答える。


「もちろんやるさなんだか面白そうなことが起きそうだ」
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る