第25話 苦
現実は非情だと思った。
どれだけ窮地に陥っても、成るようにしかならない。
どこまでも因果応報。
ありったけの力を込めたところで、ピクリともしない。
指の関節すらも動かなかった。
ただでさえ息が上がっていたのに、更に苦しくなった。
余裕はない。
今すぐにでも息を吸わないと。
それなのに、息ができない。
全身が空気を求めているのがわかる。
焦りに焦って残りかすのように残っていた力で動こうとするが、動けるわけがない。
視界が少し暗くなっただろうか・・・
更に焦る。
そろそろ本当にマズい。
窒息死もあり得る。
何が『俺は死なない』だよ!
あいつが助けに来ない限り絶対死ぬだろこれ!
「・・・・・、・・・・!」
助けを呼ぶにも、何も出ない。
ヤバいやばい苦しいしんどい苦しいどうしよううごかないとでもうごけないどうしようどうしようまずいほんとにまずいなんとかしないとほんとに死ぬああもうなんでこんなときになにもおもいうかばないんだよ役立たずが
何もできない。
もがいても、もがいても、息ができない。
あ、これ、終わったわ。
悟った。
魔女
「何あっさり気絶してるのさ。」
「、、、ゴホッゴホッ、、え?」
死ぬ気がしたのに、これは多分生きてる。
魔女
「死んでないよ、君。」
「・・・散歩に行ってたんじゃないのかよ。」
魔女
「まずは感謝したらどうだい?
これでも一応命の恩人だよ?」
「・・・俺は死なないんだろうが。
それなのに命の恩人がいるってのか?」
魔女
「そうだね。
実際、私が君を見つけたのはついさっき。
それこそ散歩終わりだよ。
どんな様子か見てみようと思って覗いたら、まるで石みたいになってたんだから。
でもそこから引き上げたのは私だからね。
君ではきっとここに上がってこれない。
その点私はいい仕事をしたと思っている。」
「お前、散歩したのか?」
魔女
「え、うん。」
「どれぐらい?」
魔女
「昼まで鍛錬だったでしょ、だからそれに合わせて帰ってきたんだよ。」
「ん?
・・・ってことはだな、、、俺はどれだけ水の中にいた?」
魔女
「ついさっきまでだよ。
一応君は課題はこなしたよ。
気を失いながらだけどね。」
まじか。
俺あの5分程度で窒息したのにまじか。
2、3時間窒息したまま川の中って、、、よく生きてたなほんとに。
魔女
「今日の鍛錬はこれでおしまい。
まだ何かしたいなら勝手にするといいよ。
あ、一応だけど、出来るようになるまで繰り返すからそのつもりでいてね。
それじゃあ、お疲れ様。」
「あ、お、お疲れ。」
超しんどかった。
あれは本当にトラウマものだ。
水が怖い人の気持ちがよくわかる。
息ができないこと。
それは、あの中ではどうしても解決できなかった。
どれだけもがいても変わらなかった。
逃れる方法は、そこから離れること。
そもそも水の中に入らない。
入ったのなら、出る。
でも、あの時は出られなかった。
入るしか道は無かったし、出る事は今の俺には無理だった。
だから怖い。
「あー。
明日もするのか、これ。
・・・嫌だなぁ。」
初日で何へばってんだろうなって、昨日の俺に言われそうだな。
この感じだと、俺が死なないのは確かだろう。
窒息して数時間放置されて、死なない方がおかしい。
・・・となると、俺が多くの人を殺すのも本当かもしれない。
「あぁー・・・。
どうしちまったんだろうなぁ、俺。」
ただ部屋でゲームしてただけなのに
気付いたら異世界で
その異世界で人を殺して
この先もまた殺す
その為に鍛錬に励む今
「俺が生きてることに、意味なんかねぇだろうよ・・・・・。
なんだよ、殺すために生きる、って・・・。
何で生きてるんだろうな、俺。
「死んだってさ、誰にも迷惑かけないだろ・・・。
というか、俺が生きている方が迷惑だろ。
・・・・死のうかな。」
「・・・・・・・・・・・あ。
・・・俺は、、、死ねねえんだった・・・・。」
この日はこのくらいだった。
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