第23話 落し物

魔人の長

「とはいえ、今のお前は弱すぎるからな。

まだ力の操作の段階にすら入ってない。

故に、まずはその力を操れるだけの土台を作ることからだ。」


「具体的には何をするんだ?」


魔人の長

「魔女の霧へ戻ると良い。

そこで訓練は行われるだろうからな。」


「・・・・・わかった。

・・・また来る。」


その後すぐに墓を去った。


目が覚めて、無意識に会話を回想する。


「俺は、大量殺人者、、、、か・・・。

1人殺しただけでこんななのに、そんなに殺せるかよ、、、

・・・・・なんで、、いつから、こうなっちまったんだろうな。」


それでも足を運ぶ。

これからの住みかとなる、あの霧の中へ。




魔女

「おや。

思っていたよりも早かったね。

・・・どうだったかな?」


「・・・・・・嘘でも大したことないなんて言えねえよ。

・・・・・疑問とか、不安とか、恐怖とか、、、孤独とか・・・そんな感じだよ。」


魔女

「・・・・・まぁ、それはそうだよね。


・・・・そうだ、お茶飲むかい?

飛び切り美味しいのを淹れてあげるよ。」


「あぁ、きっと美味しいだろうな・・・。」


昨日と同じティーテーブル。

椅子も同じ。




「・・・なぁ。

俺は、強くなるために何をするんだ?」


正面に座る女に問う


魔女

「・・・・・鍛錬と言っても色々とあるからね。

君の鍛錬は筋力とか、そういった辺りが主になってくるかな。

まずはその力を操れるようにならないとね。


相当にしんどいと思うよ。

それを毎日こなしてもらう。

とはいえ、定期的に休息は入れようと思っているから安心してね。」


「・・・・なんだ、思ったより普通なんだな。

なんかこう、もっと鬼畜なものなんじゃって思ってた。」


魔女

「一応言っておくけど、これも鬼畜だよ。

君を怖がらせるわけじゃないけどさ。」


「死なないってわかってんなら全力で追い込めるしな。」


魔女

「そうだね。」


「早速今からやろうぜ。」


魔女

「まあまあ、そう急ぐなよ。

・・・焦っているのかもしれないけどさ、良い休息あってこそ良い鍛錬というものだよ。

今日は休みなさい。

鍛錬は明日からだよ。」


「い、いや俺そんな疲労たまってねえって!」


魔女

「いや、今日はだめだ。

そんなに強くなりたいなら、魔人の長の会話から何か拾ってごらんよ。」


「拾う?」


魔女

「うん。

君と魔人の会話には大きなキーワードが隠れている。

今の君はまだそれを理解していない。

それがわかる頃には、君は一回り強くなっていることだろうね。」


「・・・・」



拾う?

拾うってことは、何かを落としたとか、そういう状況だってことなはず。

つまり、俺が何かを見落としてるってこと、、、だよな?


魔女

「ちなみに、君の鍛錬もそれに関係したものだよ。」



俺の鍛錬と魔人の長との会話で関係のあること、、、?


魔女

「この問題に関して、ヒントは与えないよ。

これは君が自力で辿り着かないといけない。」


「わかった。

頑張ってみる。」




・・・・・・





「・・・・・・ぜんっぜんわからねえ!」


魔女

「あは。

そりゃそうだと思うよ。

もし今気付くとしたら、この鍛錬は必要ないとも言える。

まぁ、当分の間は気付かないだろうけどね。」


「そんなに大事なものに気付いていないってのか?」


魔女

「そうだね。

とはいえ、君だって懸命に考えてる。

それなのにどうして見つからないのか。」


「・・・俺がそれを大切だと思っていない、から?」


魔女

「さあ?

私はもう何も言わないさ。」


「うーーーん・・・・・」


ちょっとマジでさっぱりだ。


力の土台、とか関係あんのか?

それとも力の操作とか・・・?









途中から、考えるのをやめた。

答えに辿り着ける気がしない。

実際、着くどころか辿る道もわからない。

数時間考えてもこれだった。

魔女が言ってた通り、結局俺は今日中に見つけることなんて無理だろう。

いくらなんでも進歩が無さすぎる。


魔女

「夕飯、そろそろ食べるかい?」


「あぁ、もうそんな時間か。

食べるよ。

今日は何だろうな。」


魔女

「肉、なんてどうかな?」


「うおお!

最高じゃねーか!」


魔女

「そうだろうそうだろう!

実は私も肉には目が無くてね!

これを食べることが唯一の喜びってところもある。」


「え、そんなに?」


魔女

「え、うん。」


やっぱ魔女だ。






「あぁあ、美味かった!」


魔女

「そうだね。

これこそ人類の偉業だよ。」


魔女

「ところで、結局答えには辿り着いたのかい?」


「いや、全然・・・。」


魔女

「だろうね。」


「だろうねってなんだよ。」


魔女

「こちらの話さ。


さあ、もう夜だ。

明日はいよいよ鍛錬が始まるよ。

明日に備えて早く寝なさい。」


「わかったよ。

おやすみ。」


魔女

「あぁ。

おやすみ。」


少し前より打ち解けたような気がする。

それともただ俺に気を使っているだけなのか。


魔女には気を許さない方が良いのか。




わからないことだらけだ


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