余命(意識)半年のへっぽこ秘書の覚え書
山の川さと子
序文
ン、ジャジャジャジャーン————!!
余命宣告はいつも急転直下、盛大なる効果音付でやってくる。ドラマや小説でお馴染みのそれは、へっぽこの身にも待ち構えてたようにやってきた。
「えっ?
自分で自分を動かせなくなっちゃうかもよって、それ一体どういうことですか?半年後には、あたし植物人間になっちゃうってこと?」
あたしの問いに対し、先生は手を膝の上に乗せて曖昧に微笑んだ。
「うーん。だからね。やっぱり手術した方がいいと思うんだ」
そして、あたしの隣にいたダンさんと息子にゆっくりと顔を向ける。
対する二人は、固まったまま先生をじっと見つめていた。
そりゃそうだろう。同居家族が余命、いや余意識半年宣告をされたのだから。
でも実は、彼らは既にへっぽこより先に診断内容の説明を受け、ある程度、いやしっかりと事態の深刻さを理解していたらしい。でも、当のへっぽこは、そのへっぽこさゆえに何も知らずにその土壇場に上がった。
今、改めて思い返してみると、最大級に警戒して毛を逆立てている猫を前に、如何に保護しようかと誠意を尽くしてくれている人々。そんな図が浮かぶ。
かなり間抜けな光景だ。つーか、へっぽこ以外の三人が気の毒過ぎて、申し訳なさに言葉を失う。
そう。あたしは大変に面倒くさい患者だった。
手術はしない。検査もしない。早く帰る。帰っていいでしょ?告知?そんなの要らんわい。あたしゃどこも悪くない。
ひと昔かふた昔前の農村にいるような、ザ、病院嫌いの頑固ジジイ。ハタ迷惑な患者。
そんなへっぽこ秘書が、にっちもさっちもいかなくなって、まな板の上の鯉になり、そして三途の川を渡りかけて戻ってきて、その後もジタバタする話だ。
あ、でも。
そんな宣告を受けてから令和の今で四年強。へっぽこのあたしはまだ生きてる。色々な存在に助けて貰って。
だから、そんなあがいた日々をゆつくりまったりとソフトに綴っていこうと思い、今回書き始めました。あたし自身が助けられたように、いつか何かほんの一部でも、どこかの誰かの役に立つことがあればと思つて。でも同時に、どこの誰もそんな目に遭わないことを強く強く祈りをこめて。
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