第55話 謎の男の不満(2)

 でも何故か、ア・リシャーの前に座る小汚い小男だけは、また今迄の強気な威勢がシュン! と収まり、大人しくなり、下を向く。それも? 自身の身体を硬直させ、ブルブルと震わせているから。


 ア・リシャーは小汚い小男へと、机を叩きながら、怒声を吐く行為を辞め。


「あの、貴方……。急に自身の身体を震わせ始めたけれど……。もしかして身体の体調が悪いのですか?」と尋ねる。


『ブルブル』


 小汚い小男は、自身の身体を震わせつつ、大袈裟に首を何度も、ア・リシャーへと振って見せて、自分は何でもない。大丈夫だからとジェスチャーする。


「そうですか」


 だからア・リシャーは小汚い小男の様子を見て言葉を返せば。自身の振り上げていた手を静かに机に下ろすのだ。


 そして(この人、本当にどうしたのだろうか?)と思い。


 彼女は俯き、震える小汚い小男の様子をまた窺い始める。


「……だからね、アリちゃん。俺は君を冒険者組合・ギルドの成績№1 受付嬢にしてあげようと思っている訳。分る?」と。


 そんな様子のア・リシャーに対して、小汚い小男は、小声でボソボソと囁くように、自身の目的を説明し、尋ねる。


「はぁ~」


 ア・リシャーは取り敢えず、小汚い小男の問いかけに対して返事だけ返しておく。


 すると小汚い小男は、自身の頭をア・リシャーの側迄寄せると。


「あのさ、アリちゃん? 物は相談なのだけれど。良いかな?」と、小声で尋ねてきた。



 ◇◇◇





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