『ショートショートつめあわせ』

石燕の筆(影絵草子)

第1話

『生命維持装置』


点滅する生命維持装置。

『スイッチオン』とはしゃぎながらボタンを押そうとする子供。

それを止める父親。

ベッドで寝かされているのも同じ父親。

寝ていない方の父親の額には、

番号で『009』とある。

八人目の父親は、今静かに家族によって看取られる。

『私もいつか008番と同じ運命を10年後に辿るのだ』

クローンの命は、10年が限度だからだ。

それまでは息子と一緒にたくさんの思い出をつくろう。

009番は、大きな手のひらをそっと愛息子の頭に乗せた。

10年後、君はどんな大人になるだろう。


『博物館』



展示された品の、ひとつひとつを

観て回る。

『脳』『大腿骨』『肋』『腸』『脊髄』

そのどれもが巨大で、見上げるほどだ。

入口には、

『規格外大型人類解剖展示場』とある。

『センスがないタイトルだ』と客は毒づきながら、展示場をあとにする。


『擬似体験』


窓の外では人々が逃げ惑う。

空襲警報が発令された。

真っ赤に染まる町。人。

崩れ行く建物。

『ああ、これが戦争か』

やがてしばらくして、

映像が乱れる。

頭についた電極の装置がはずされた。

『いかがだったでしょうか、わが社の戦争体験システムの試作運転は』

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『ショートショートつめあわせ』 石燕の筆(影絵草子) @masingan

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