第98話 屋敷を取り戻す

 エルザと俺の距離が急激に近くなった事について、当然ながらミザリアが気が付いている。俺達が宿に戻るや否や、エルザを連れて何処かに消えて行った。


 食事までの間に服を直していて、完成したのでムネチカに渡したが、彼女はきょとんとしていた。


「同じ服だけしか持っていないと、おしゃれも出来ないだろ?折角綺麗な顔立ちなんだから、おしゃれをしたいだろ?今はこれだけしかなくて悪いが、近いうちに、一緒に服を選びに行こうな!」


 デートの誘いである。そうと理解したムネチカは真っ赤である。中々分かり易くて可愛い。派手な格好や露出の多い装備を好んで着ていたが、俺の大事なムネチカが周りからエロイ目で見られるのは嫌だと言ってからは、清楚な格好をしてくれている。扇情的な格好をしているのも良いが、普通の格好の方が品があって好きなのだ。2人きりの時は扇情的な格好もありだし、むしろウエルカムかな。


 食事や風呂も終わり、後は寝るだけになった 。しかし俺とイリア、ミリアは 外行きの格好をしている 。夜中に3人でそっと宿を出るのだ。部屋のドアはミザリアが施錠をしておいてくれる。これから人気のないところで、3人であんな事やこんな事をしにいくのさ。勿論人には見られてはならないし、それこそいざ実行する時には一気に大胆に、それでいて大胆に行い、彼女達を満足させるのさ。


 目的地は宿から徒歩で15分位の所だ。そこにはさすがに夜中は誰もいないが、念の為裏手からこっそり入る事にした。無人の建物でする事は1つだ。今からその時が待ち遠しい。壁の一部に破れている箇所があり、そこから敷地に入る事が出来た。建物の所まで目立たずに行ける秘密の場所があるという。なので2人に案内して貰う。かなり小さい頃に発見し、親に内緒で時々屋敷を抜け出すような時に使っていたそうだ。


 裏手には雑草の生い茂ったちょっとしたスペースがあるが 、その草や何やらで見えないところを目指す。


 敷地が荒れ果てていた為、あっさりと敷地に侵入できた。おおよその屋敷の大きさは聞いている。夜の為に今は暗いので、実際どれ位の大きさであるのかは目視ではよくわからない。夕方に遠目で目視しかしていないので2人の指示に従うしかない。予め 大まかな図面を書いて貰っているので建物全体を想像し、基礎の部分も含めて収納に入れる!そういう風に心の中で強く思い、建物に触れながら収納を発動すると、忽然と建物がなくなった。


 給水管が途中からなくなったので、建物があった所の中央部分から水が吹き出し始めた。俺達は来たところからそそくさと戻り、 誰にも会う事もなく宿に辿り着いた。念話でミザリアを呼びドアを開けて貰い、再び施錠しておく。そうして都市伝説の1つを作ってしまった。


 朝になって忽然と屋敷がなくなっているのだ。何1つとして何が起こったのかについての情報がなかったからだ。


 本来建物をこうやって収納に入れるというのは、建物を奪う行為ではあるが、今回は違う。そもそもこの国を違法に滅ぼしたのも宣戦布告もなく突然乱入してきたのだそうだ。また建物自体も違法に占拠して行ったものであるから、所有権は親を殺されたイリア達にある。そのイリア達に俺は頼まれたのだから合法的に建物を収納に入れたのだ。持ち主の依頼で入れているだけだから犯罪でも何でもない。今は設置場所の関係から建物を出せないが、ホームタウンに戻ったら土地を確保して建物を出そうなと2人に話しをした。 建物の中にある荷物がどうなっているのか分からないが、1つ言えるのは、他人に使われる前に、イリア達の思い出のある屋敷を取り戻したのだ。その為、2人は泣きじゃくっていた。今日は俺の左右にイリアとミリアが俺に抱き付いて寝る形になった。恐らく荷物はそのままで現状渡しとなっている可能性が高い。


 そのう、こっそり大きくなった胸を触りたかったんだけど、両方の腕に抱き着いて離れないから、出来なかったんだよ・・・





作者からのお知らせ。


 2022年8月1日現在、私以外の家族全員がコロナの陽性者になり、私自身の感染を防ぎつつ、世話、看病しながらテレワークをしています。

 どうやって1人のみ感染せずにやっているかコラム的に投稿中ですので、気になる方は見てください。現実の話です。


家族が陽性者になりました!〜唯一の非感染者があたふたと家庭を切り盛りする〜

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