第41話 出発

 盗賊達の死体についてだが、アジト周辺に放置する事とし、俺達は出発の準備をしていた。抑止力とする為の常識らしいが、犯罪者とはいえ、俺には死体を獣の餌にするという事に対して忌避感を覚え、自ら選ぶ事が出来なかった。前回もそうしたのだけれども、本音では受け入れられないが、皆の意見を受け入れざるを得なかった。住む世界が違いすぎるのだと再度思い知らされた。


 また、捕えた者を確認すると、生き残りに副頭領がいた。


 念の為、1人ずつ面談する事に決めるとミザリアがアドバイスをくれた。


「あの、友安様?あの中に意図せずに盗賊の一団に入らさせられ、仕方がなく従っていた者が居ないか確認なされるのはどうでしょうか?あの人数ですから、殆どの者を次の町にてギルドに突き出される事をお勧め致します。確認は嘘を禁じれば良いと思いますけれども如何でしょうか?」


 ミザリアの顔にドキドキしながら俺は頷き、少し考えてから確認した。


「この中に無理矢理盗賊をさせられている者がいるか?例えば奴隷になっていたとか」


 そうすると3名が手を上げた。先程俺が到着した時に戦っており、生き残っていた若者だ。

 俺は話彼らの話を聞いた。


 奴隷α

「はい、私は奴隷にされており、頭領からの命令で一緒にご主人様達を襲う一団に組み込まれて戦わさせられました。私達3人はこいつらに襲われた商隊の護衛をしていました。2日前に襲われ、我々3人以外の仲間は全て殺され、囲まれた私達が降伏すると頭領が私達を奴隷としたのです!」


 ミザリア、ゼツエイと協議をした。3人のカードも確かに普通の色で、犯罪者のそれではなかった。

 ミザリアの言うには、犯罪者ではない奴隷が主人の命令で犯罪事案に加担させられたとしても、当人達の罪にはならないという。


 どんな屈強な男でも、命令に背いた時に発生する激痛や苦しみに悶絶するという。余程の者でない限り奴隷紋や首輪に逆らって死ぬ所まで行けないというのだ。大抵気絶してしまい気力を削がれるのだ。酷いものだと俺は怒りを覚えた。


 この3人はもう一度嘘偽りが無い事を確認する為に、副頭領に聞いたが同じ様な事を言っており、嘘ではないという事が確認出来た。


 俺は即時解放をすると決め、実行した。そして返してやれるスキルを返してやり、四則計算まで与えてやった。恐らく与えたスキルを含め、余程の事がない限り返しきった筈だ。遊び人系は頂いたままにするけど、これ位は良いよね?俺達がいなかったらそう遠くないうちに死んでいたのだろうから、そのお礼という事で。ねっ!


「取り敢えず俺達は修行の為、この先の港町を目指しているんだ。あんたらはどうする!?もう奴隷から開放したから基本自由だ。それと盗賊から奪った物の中から好きな装備を選ぶと良いよ。余ったら俺が貰うから」


 そう言うと3人はその港町まで同行し、そこで別れるというので同行を許可した。

 そして馬車4台にて本来目指していた町を目指す。基本的に次に着いた町で盗賊を引き渡し、回収した物も売り払う事とした。


 開放した3人を先頭の馬車に、俺達の馬車は殿とした。


 その後は順調に進み、夕方少し前に町に着いた。問答無用で盗賊をギルドに突き出してやる。町の規模は典型的な宿場町で、旅人をメインにしていて、交易等も盛んな町だ。


 明日の朝、盗賊討伐分のお金を受け取る事とした。

 そして開放した3人とゼツエイ、フランカ、イリアに宿の確保をお願いし、フランカに宿が決まったらイリアとギルド前に来るように伝えている。


 そしてあの3人には荷物を積んだ馬車を動かしてもらっている。

 一応種類ごとに分けていて、武器や防具の装備品、服類と食品、嗜好品や美術品や贅沢品に分けた。3班に別れて売りに行く。既に手元に置きたい物は、俺達の馬車に入れている。収納持ちだというのを大っぴらにしない為に、わざわざ馬車に売る物を積み込んだ。


 俺は武器と防具などの装備品、ミリアが服類、ミザリアが贅沢品、嗜好品だ。


 俺はまず防具店に向かい、次が武器屋だ。俺の乗っている馬車とミリアの馬車は最後には売りに出す。

 因みに馬はゼツエイが売りに行っている筈だった。

 防具も武器もごく普通の物で、需要が多いので全て買い取ってくれた。

 ただし量が多いので買い叩かれたが、安く売る事を条件に応じた。初心者等の支援になればとの事でだ。


 俺の方は比較的早く終わったので、ミリアの様子を見に行く。俺と行動を共にしたのはオイパと言った。

 ミリアの方も比較的早く済み、やはり安く買い叩かれてようとしていた。まあ、お金には困ってはいないが、ミリアの方は交渉が難航しており、店員とすったもんだしていた。

 俺達が加わると店員の態度も変わり、概ねミリアの言い値になった。

ミリアは珍しく熱くなっていたので、頭を撫でて落ち着かせている。

 そして食品を売りに行くが、小麦を中心としていた為に、中を確認して虫の有無を確認したりした後、相場より少し下での買い取りと予測の範疇内だった。


 そして馬車を売りに行った後はミザリアの所に向かったが、丁度全て売り払った後だった。


どうやったかは分からないが、予測の数倍の金になり、全て合わせると7000万ゴールドに少し足らない位になっていて、満面の笑みのミザリアにドキドキしながら釣果をじゃなくて、結果を聞いてミリアも俺も激しく驚いた。そして恐る恐る質問してみた。


「あ、あの、ミザリア?確か1000万が精々って言ってなかった?」


「ふふふ。どうしてでしょうかね?もう少し高くなりませんか!?と少しお願いした位ですわ。友安様の日頃の行いが良いからではありませんか?」


 気の所為か先程1番上のボタンを掛けながら店を出てきたような気がする。


 多分胸元を少し開けて色気を使ったのだろう。やはりミザリアの魅力は凄まじい。

 そしてギルドを目指し、すっかり暗くなった道を進む。

 ギルドに向かっていると、俺を確認したイリアが走ってきて俺にジャンピングアタックを決めて、大変控え目な胸を俺の顔に押し当てて来た。


「友安様、遅い!遅い!遅いぞおぉー!」


 プリプリになり怒っていた。

 そしてそのイリアの襟首をミザリアがヒョイっと掴み俺から引き離していた。

 俺は、イリアを撫でた。



「悪い悪い。案外手間取ってさ。宿はどんなだ!?」


「まずまずって所ね!古いけどまあまあ綺麗よ」


 等と話しながら宿に向かうのであった。

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