第39話 アジトへ
結局のところゼツエイが相手にした奴等の全ては、馬もろとも殺されていたので、スキルを奪う事しか出来なかった。
その為、奴隷に出来たのは10名で、その者達が乗っていた10頭の馬をゲットした。
死体をどう処理するのかを聞くと、皆異口同音で街道に躯を晒すという。盗賊への見せしめの為であり、暗黙のルールだそうだ。ステータスカードを回収しているので、ギルドで換金の際に死体は不要だった。
死体から武器と金目の物等を回収し、懐に金目の物が無いかを確認した。その後、死んだ馬は燃やしてやった。馬に罪はないからだ。そうしていると、気絶した奴らが次々と目覚めていく。
俺は起きた奴等を一箇所にまとめ、その都度俺の奴隷にしていると伝え、俺を主人だと認識させた。
まだ興奮していたので、大量の奴隷を得た事の意味を理解していなかった。
だが、捕らえた奴等は生きている事に対して驚きと、奴隷にされた絶望感の中で焦燥している事が読み取れる。
俺はミザリアやツインズに対しての下卑た声が許せなくて、殴りたい衝動を必死に堪えていた。そして小便がしたくなり、ゼツエイへ奴隷への対応をお願いし、用を足しに藪に入った。
しかし、ゼツエイの対応は斜め上というか、苛烈を極めた。1人を除き、アジトへ行くように命じたのだ。アジトに到着次第突撃させ、アジトにいる盗賊共を殺してこいと。
アジトにいるのは20名程で、3人の首を持ってきたら売り払わずに手元に置いてやると告げた。しかし人数が合わない。9人で20名を倒しに行けば、最大でも6人しか実行できない。しかも1人も殺せなかったら殺すと言って送り出したそうだ。
俺が小便をしに行っている間にゼツエイは、捕えた賊を既にアジトへと向かわせており、気付いた時には既に9名が馬で向かっており、駆けて行く後ろ姿が微かに見える状況だった。
俺は焦り、残った1人にアジトを案内させ、皆についてくるよう指示をした。
任せた以上はその内容が自殺しろ等と、余程の事ではない限り文句は言えない。明確に指示をするのだったと今更だが後悔した。
俺は甘かったようだ。仲間の被害を出さずに敵の人数を減らそうと思うと、必然的に捕らえた者をけしかける事を行うというのは、想定内の選択肢の筈だった。それを分かってはいたが、まさか俺に断りもなくゼツエイがそれを実行するとは考えていなかった。もしもそれを行おうとしても、他の者が止めるであろうし、俺の奴隷だから一言断りを入れて来るものだと思い込んでいたのだ。
そして俺以外はゼツエイの命令が正しい選択として、黙って奴隷達を送り出していたのだ。
俺はアジトへ急いで向かうように指示をし、馬車で向かう。
そうすると10分位進むと、争いの音や怒声、罵声が聞こえる。案内させた盗賊には馬車の護衛を命じ、俺はアジトに突入していった。
馬車は細い道の脇に隠しておいた。藪を抜けると切り立った崖があり、その麓に洞窟の入り口がある。
どうやら洞窟をアジトとしているようだった。
やはり平和ボケの日本人だからか、できる限り殺したくないと思ってしまう。送り込んだ奴隷が必死に戦っていて、裏切り者だの何だのと罵声を浴びていた。
今現在戦っているのは奴隷が3人で、相手は13人居た。つまり7名を倒し、6名がやられた事になるのだった。
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