第7話 勇者奴隷を得る
俺はつい怒鳴り散らしてしまったが、奴隷商は冷静に対処していた。青臭いなと思ったのだろうが、異世界人だからか?高々奴隷の生き死にに一喜一憂する様を見て関心すらしていた。
「この娘は今朝持ち込まれました。勇者殿が来ると訳の解らぬ事を申しておりましてな。生娘ではございますが、友安様がお買いになる手合ではありませぬぞ!まだ姉の方が見所がございます!姉の方はあちらです!」
「因みにこいつはいくらだ!?」
「はい、脚の腱を切られておりましてな、まともに歩けませんし、傷も酷く陰部も焼かれており性奴隷にも成りませぬぞ。おそらく余程人間離れした性格の持ち主で無ければ萎えますぞ。はあ値段でしたな。そうですな当方での最低販売価格になります10万Gですな。先日私共でお売りした奴隷の為、決まりで仕方なく引き取りましたが酷い事をするものですな」
俺は頷きその女の子の牢屋の前に立つと、声も掛けていないのに彼女は正座し、俺に顔を向けて三つ指ついてお辞儀をした。
「お初にお目に掛かります。異界より来られし勇者殿よ。注意し警戒なされよ。貴方様に悪意ある危険が迫っております。用心なさい。我が姉を連れてお行きなさい。貴方の剣となり盾となりましょう」
まだ火傷をしたばかりのようで、体の傷も新しく痛々しい。目も切られたばかりのようで包帯が巻かれている。予言じみた事を言うと、もう一度お辞儀をしてから倒れ込むように寝ていった。かなり辛そうで息も荒い。
俺は余りの酷さに絶句し、言葉を発せなかった。彼女が言う姉の事が気になったので姉を見る事にした。
見ていられなかった。取り敢えずその場を離れたかった。つまり目を逸らしたかったのだ。
驚いた事に双子の姉妹という。美少女だ!但し獣人の。尻尾と猫耳があるのだ。妹を見た時は気が付かなかったというより、傷が酷くて気にするだけの精神的余裕がなかったのだ。
この子達は性奴隷として貴族に買われたが、妹が気味の悪い事を言い、更に犯そうと襲いだしたら主人が突然死した。家族の1人が先ずは妹の方をとなり、折檻と傷を負わせていた。折檻の最中に他の家族が見付けて暴行を止めさせたが、縁起が悪いと持ち込んだそうだ。殺すと呪いを掛けられるのではと恐れて殺す事が出来なかったのだ。
吸い込まれるような瞳だが子供だ。何故ならちっぱいで胸がまだ殆ど成長を開始していないっぽかったからだ。
こんな子供と致すなんて犯罪であり、俺はロリコンじゃない。当然抱けないが何故かさっきの妹の方の言う事に従う必要があると思った。
「お前の妹がお前を連れて行けと言っている。お前は俺に何が出来る!?」
「私は多少なりとも剣術を教えられておりますので、剣でお役に立てるかと。希望するならばご主人様の盾となり剣となりて、敵を討ち滅ぼしましょう。他にはこの体しかございません。魔法は申し訳程度に土と火が使えます」
「お前の妹は俺を異界の者と、見えない目で見抜いたんだ。君を連れて行けと、警戒せよ!と予言らしい事を言っていたよ。君達は一体何者だい?」
「どうかあの子をお助け下さい。あの子さえ無事ならば何でも致します。勿論体をご所望されれば誠心誠意ご奉仕致します。ですのでどうかあの子をお助け下さい。あの子は時折不思議なものを見、時に予言のような事を申します。性奴隷としてお仕え致しますのでどうかあの子をお助けください」
俺は直感でこの2人が運命の女神だと感じており、頭に連れ帰れと警笛が鳴り響いた気がして、連れ帰ると決めたのだ。
「トリンズ殿、ブルク殿、この娘を俺の従者にお願いします。それと妹の方は私が個人的に買います」
そうして手続きをしていく。何か言いたげだったが、俺の顔を見て黙って対応をしていた。
俺は10万Gを払い、奴隷売買の契約をする。次は主人の設定だ。
奴隷商が奴隷紋を胸元に刻み、俺の掌を少し切ると奴隷紋にその掌で触れ血を付着させた。すると血が付着した辺りが発光して俺の奴隷となった。姉が先で妹が後だ。画面にテロップが流れたから、2人が俺の奴隷になった事が分かった。
妹が辛そうに諭してきた。
「いけません。私は今日死にゆく運命です。この傷ですから長くは持たないでしょう。いつまで意識を保つ事が出来るかすら分かりません。明日の朝日が拝めるかどうかなのですよ。どうか捨て置いて下さい」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもだけど、仮に死ぬにしろこんな所で死ぬよりも、ちゃんとした所で姉に看取って貰うんだ。それにまあ死にやしないさ」
そうは言うものの俺を振り解く力はない。まずは宿に送って貰う事にした。2人が着ているのは、とてもではないが服とは言えない貫頭衣というボロ布を纏っているだけで、余りに酷かったので通り掛かったお店でぱぱっと服を買った。妹の方を治してからまたちゃんとしたのを買いに行けばよい。
そして宿屋に到着し、奴隷の分の追加料金を払い、妹の方をお姫様抱っこして部屋に入ったのであった。
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