第5話 母親の家出
母親は化粧を終え朝ごはんを食べ終えたまみ子とまだ登場していなかったが2歳離れた妹当時1歳のみあ子を抱っこし
母の自転車の後ろにはあたしを乗せ
前カゴ辺りに引っ掛けるタイプの椅子には、みあ子を乗せ自転車を走らせた
今思えば母の家出だったのだろう
最寄りの駅まで自転車で10分ほど
各駅停車の電車しかない田舎に住んでいた。30分ほど待てば電車は来る
改札機で母は切符を買いおんぶ紐におわれたみあ子と、まみ子は母の横に立って
電車が来るのを待っている
その間も特に子供の2人に話しかける事無く静かに電車が来るのを待った
子供ながらにもうあの家には帰らないのかなと思うも何処かワクワクする気持ちもあったのを覚えている
ただいつも大事にしていた人形を忘れた事を伝えると母は『同じ物をまた買ってあげるから』となだめるがそこはやはり
子供だ。『同じものじゃないあの子じゃないとだめなんだ』と泣いても母はそれ以上何も言わずまみ子の手を引き電車に乗り込んだ
母の家出は今に始まった事では無いが
いつもなら電車に乗らず自転車行ける範囲の家出だった。
電車を乗り継ぎ着いた先は母の実家
まだ1歳のみあ子と3歳のまみ子を母の実家に置いて『いい子で待っててね』と
祖母に預け母は玄関を出た
すぐ戻ってくるのかと思いながら
気がつけば月日は流れ保育園も年長になり祖母と祖父が育ててくれていた
不思議と寂しい気持ちもなく母が居ないことも聞いてはいけない気がして過ごしていたある日母が迎えに来た
『まみ子保育園卒園したら小学生になるからランドセルいるよ買いに行こう』
いきなり来た母に不思議と『わかった、ランドセルかわいいのがいい』とだけ返事をした。
当時は女の子は赤いランドセルと決まっていたので可愛いも何も無いが一緒に買いに行き母はそのまま2人を連れ駅に着いた。『おばあちゃんは?おじいちゃんは?』と聞いたら『今からお家に帰るんだよ』と母が言う。勝手な母親だが従うしか無かった。
みあ子も一緒に手を繋いで電車から見る今まで育った町をみながら母は『お家に帰えろうね。いい子にしてた?』と聞いてきた、3年程会ってなかった母は何事もないような顔をしていた。
サヨナラも言わず思い出の詰まった祖父母宅を出たのが胸をギュッと締め付けた
そしてまたあの昔居たボロボロの借家に3人で歩いて帰った
家に着くと父は居なかった
借家は二階建て木造のトイレは今では珍しい ぼっとん便所
母親は当時は喜怒哀楽が少ない何を考えているか分からない女性だったその時は
母とも長く離れていたのでそう思ったのだろう....
家に着くと買ったばかりの赤いランドセルと荷物を2階に持って上がるように言われた。
みあ子と二人慣れない階段を上がりながら2階に上がった
最後に家を出た時とさほど変わりのない部屋にランドセルを置き何も無かったかのようにまた借家での生活が始まる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます