ブツ切り世界と続きの世界

渡部富美子Fumiko Watanabe

愛想笑いしていた世界

昨夜の夢も珍しいパターンだったので記録しておく。


夢の中で、私は人の声で目覚めた。

大勢の女性の話し声が聞こえてきたからだ。


そこはおそらく職場であろう、隔離された綺麗な部屋だった。


私がいる部屋の壁を挟んであちら側は、大勢が休憩をとるための椅子が数多く並んでいる。そこに座って楽しそうに会話をする女性たちの声が聞こえていたのだ。


どうやらそこの世界の私は具合が悪くなり、売場を離れ一人別室で休んでいたようだ。


休憩室を出た私は所属長らしき中年男性の元へとお詫びの挨拶に行った。


「忙しい時に困るんだよね~」部長っぽいオジさんにこっぴどく怒られた。私は愛想笑いをしながら今後は気を付けますと言っていた。


職場から帰ってきた私は、夕食の支度をしていた。


現実世界ではオーガニックなヴィーガンをしているにもかかわらず、なぜか夢の世界ではしゃぶしゃぶを作っている。


30代くらいの見知らぬ面長な男性と暮らしているようで、「だめじゃない、生肉を食べたりしたら」と世話を焼いていた。


その時の私も内心ではこんなことしたくないと思いながらも、その男に愛想笑いをしながら夕食の支度をしていたのだった。


しゃぶしゃぶのお出汁を温めようとしていたところでこちらの世界へ戻ってきた。



朝目覚め、さっきまで見ていた夢を思い返して「あっちの自分も大変なんだな・・・」とつぶやいた。


今回見た夢は、私の若い頃体験したことがごちゃ混ぜになって出てきたように思う。


デパートで働いていたこと、事務職で働いていたこと、男性と同居していたことなどが過去の丸写しではなく、少しずつ違う別バージョンの世界として表現されていた。


過去と夢とで共通していたのは、常に周囲を氣にし、相手に合わせ愛想笑いをしていたことだ。


幸い目覚めた後の、こちらの世界の私は違う。

周囲に無理して合わせたり、間違っても愛想笑いなんかしない暮らし。


もしかすると夢の自分が、寝た時に見る夢は、 こちらの世界のように自由気ままで誰にも邪魔されない世界なのかもしれない。


そうだとすると私の意識は、あちらの世界とこちらの世界(過去・今・未来)の少なくとも4つ以上を見ていることとなる。


今朝目覚めて現実だと思っているこの世界だって、多分仮想現実なのだろう。


冷蔵庫を開ければ昨日作った残り物がちゃんとあるし、カーテンを開ければ窓の外の景色は昨日と同じように見える。


一見こちらの世界は時間が続いているようだが、本当はパラパラ漫画の枚数が 莫大なためにそう感じるだけであって、冷蔵庫の残り物だって昨日の状態そのものではないし、景色だってよく見れば昨日とは微妙に違うのだ。


今回の夢でわかったことは、こちらの世界の自分は愛想笑いを卒業できているということと、こちらの世界もあちらの世界も全てはブツ切りということ。
















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