エピローグ
あれから二週間が過ぎました。相変わらず周囲の皆さんからは避けられていますが、そんな中でも少しだけ変わったことがあります。
それは、ジネット様からお茶のお誘いを受けるようになったことです。グループには入っていませんが、どうやらそれとは別枠という扱いらしいです。
このときに呼ばれる方々は決まっていて、私の他にはユゲット様とルシール様です。つまり、あの婚約破棄騒動の関係者というわけです。
今日も授業が終わってからすぐさまジネット様のお部屋へとお伺いしました。テーブルを囲んで四人でのお茶会です。最初の頃と比べて私の待遇はかなり改善しました。
お話の内容はとりとめもない雑談が多いですけど、やはりこの四人ですとあの騒動関連のお話もときには出てきます。
今回最初に話を切り出されたのはユゲット様です。
「ジネット様、王太子殿下のお姿を最近お見かけしませんが、どうなさったのですか?」
「王城で謹慎なさっていらっしゃいます。さすがに
「ということは、ご婚約には影響ないわけですね」
「今後の態度次第だと伺っております。更生の見込みがなければ、廃嫡も検討されるそうなので」
「まぁ!?」
聞けば国王陛下は女性関係にかなり潔癖な方らしく、今回の件を大層ご立腹だとか。弟君を擁立する可能性もあるらしいですね。
ご自分のことを話されると、今度はジネット様がユゲット様に問われます。
「そういうあなたはどうなのですか? 結局婚約はそのままなのですよね?」
「ええ。例えこの婚約を解消しても次がより良くなる保証などありませんし、ならばわたくしが優位な立場で夫婦生活を送れるよう準備した方がよろしいでしょう?」
「その準備とは?」
「以前、オリアンヌにいただいた記録の魔法石です。あそこに魅了の魔法を使って悪事を働こうとした証拠が録音されていますから、それを」
「まぁ怖いこと」
まったく怖がっていない様子のジネット様が形だけ怖がられました。笑顔を指摘する勇気は私にはありません。
その話が一区切りすると、ユゲット様が次いで私に話を振ってこられます。
「それにしても、あのイジドール様と決闘して一撃で勝ってみせるなんて、あなたの婚約者は本当にお強いのね」
「イジドール様はどれほどお強いのですか?」
「末は騎士団長と将来を嘱望されていると聞いていますよ」
「ふん、意外に大したことなどなかったということでしょう。ああ、オリアンヌ、誤解なさらないで。あなたのモルガン殿が弱いと言っているわけではないのよ。あの男が弱いと言いたいだけですから」
横から口を挟んでいらっしゃったルシール様が不機嫌そうにお茶を飲まれました。自分の婚約者だというのに容赦ありません。
その様子に驚かれたユゲット様が問いかけられます。
「随分と手厳しいですわね。仮にもあなたの婚約者でしょう?」
「もう婚約は解消しましたから違います」
「まぁ!?」
これには私もジネット様も一緒に驚きました。
ルシール様によりますと、あの決闘で醜態を
口に付けたティーカップをソーサーに置いたジネット様が私に顔を向けられました。その表情はわずかに羨んでいるように見えます。
「こうして見てみますと、あなたが一番順風満帆に見えますわね」
「そうですわ! 強くて優しくて一途で! わたくしのところなんて魔法の才能と多少の顔の良さだけですもの!」
「私なんて、散々振り回されて婚約解消ですものねぇ」
ユゲット様とルシール様からも目を向けられた私は、飲みかけのお茶でむせてしまいました。別に責められているわけではありませんが、何となく気後れしてしまいます。
「けほっ。み、皆さんにも必ず良いことがあるかもしれませんから」
「ごまかされているようにしか聞こえませんわね」
「本当に! そうだ、今度モルガン殿をお招きして色々と聞いてみません?」
「殿方から良い男性の見分け方を伺う良い機会ですわね」
お三方の発言に私は目を見開いて固まりました。それは、色々とまずい気がします!
その後、お三方の計画を阻止するのに私はかなりの労力を費やさなければなりませんでした。それに、できればモルガンを独り占めにしたいという気持ちもありますから!
一連の騒動の結果、良くなったことや悪くなったことがありましたが、それでも私はこれからもここでやっていけそうです。
きっとこれからも色々とあるでしょうが、モルガンと一緒に歩んでいけばすべて解決できるでしょう!
-終-
王太子も天才魔術師も未来の騎士団長もいりません!私は絶対に婚約破棄なんてしませんからね! 佐々木尽左 @j_sasaki
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