視える人―深夜の身体探し―

sho-ta

第一章 女の呪い

【其の一】

「なぁ、旧校舎の噂って知ってるか?」 


段々と日が沈むのが遅くなりだし、五時でも明るく徐々に暑くなり出す六月の下旬。南雲高校三年一組の教室にて、この学校の噂話をしている生徒が三人いた。


「何の話?」


 藍沢司の話に首を傾げながら、遠藤葵は尋ねた。


「旧校舎にある理科準備室に入ると、呪われるって話」


「知らないよ、そんな話。興味ないし」


 司の言葉に興味なさげに葵が答え、天野莉子の方に視線を向け「ねっ」と同意を求めている。


「私は興味あるけど?」


 いたずらっぽく笑いながら、莉子は言った。


「じゃ、今から行ってみるか?その理科準備室に」


 莉子の言葉に司は頷きながら言うと、席を立ち教室から出て行く。


「何で!?私まだ行くなんて言ってないじゃん」


「早く行くよ?葵」


 葵の言葉を無視して莉子は席を立ちあがると、葵に手招きして教室を出て行った。


「ちょっと待ってよ!」


 葵も慌てて席を立ちあがり、二人の後を追い掛けるように教室を後にした。


****


 この南雲高校には、本校舎と旧校舎の二つがある。現在は本校舎しか使われておらず、旧校舎に入る生徒も教師もいない。そのせいか、旧校舎には至る所に埃がかぶっており、入るのを躊躇うほどだ。


 三人は口元を手で押さえながら、目当ての“理科準備室”へと辿り着いた。


「ねぇ、やっぱやめよ?」


 莉子の袖を掴みながら、震える声で二人に訴えかけるがまるで聞いていないようだ。


「ねぇ……聞いてる?」


 葵の言葉に全く反応を示さない二人。視線を二人から扉の方へと向けると、頭がボーっとするのか視線を外せないでいる。


 ――なに、これ……身体が勝手に動く!?


 “理科準備室”に引き寄せられるように、三人は入っていく。ぼんやりとしていた視界が鮮明になっていき、三人は慌てた様子で周りを見渡していた。


「何で、中に入ってんだ?」


 訳が分からないといった様子で、司が言葉を発する。


「知らないよ!早く出た方が良くない?」


 司の言葉に反論する莉子。恐怖を感じたのか、彼女の身体には鳥肌が立っていた。葵は莉子の横で何が起こったのか全く理解できていないようで、口をポカンと開けて固まっていた。


「とにかく、ここから出よう!」


 司の一言で三人は理科準備室を後にした。


****


 旧校舎での出来事があってドッと疲れが出たのか、シャワーを浴びた後葵はベットに倒れ込む。


 ――あれは、なんだったんだろう?


 眠たいのか考えがまとまらず、携帯の待ち受けを見ると深夜〇時になっていた。目を閉じて寝ようとした葵の頭に言葉が聞こえてきた。


”私の身体……探して”


 ――えっ!?誰?


 葵の意識は深い闇へと落ちていった。


****


「んっ……ここは?」


 葵は上半身だけを起こし、周りを見渡す。


「私……ベットで寝てなかったっけ?」


 葵は自分自身に問い掛けるも、答えは見つからなかった。


「ここって、学校だよね……何で?」


 更に自問するもやはり答えは見つからないようで、腕組みをして首を傾げていた。

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