第72話 全員集合?
「さようなら……神父さま。どうか安らかに」
「えっと……ごめんね神父さま。でも、地獄もきっといいところだよ!」
ノアとレアは、消滅していくファンに向かってお別れの言葉を送る。
「育てた子に痛めつけられるのも……なかなか興奮しますね……!」
開き直って最低な辞世の句を残し、消え失せるファン。
「お主が居なくなったら計画はお終いじゃな。使えない奴じゃ」
一部始終を見届けたオトヒメは、吐き捨てるように言った。
「まあ、どうでも良いがのう」
しかし、彼女の目的はアンタレスとは別に存在している。ファンの立てた計画がどうなろうが、構わないのだ。
「……それよりもそこの二人。確か……ノアにレアといったか。どっちがどっちだか分からんが……」
それから、双子の名前を呼ぶ。
「………………!」
ノアとレアは警戒した様子で武器を構え直した。
「待て。わらわは戦うつもりなどない。もはや、この場にそなたらを止められる者は残っておらぬからな」
「……じゃあ、ぼく達に何の用?」
「単刀直入に言おう。――わらわの部下になるつもりはないか?」
「………………!」
オトヒメは、ファンを倒した二人のことを仲間に引き込もうと企んでいた。
「どうじゃ? 部下になるのであれば特別な待遇を考えてやるぞ?」
「そんなの無理だよ。……そもそも、あなたは誰? ぼく達のこと飲み込んできたそこのお魚は何なの? 神父さまはどうしてあなたと一緒に居たの?」
ノアはオトヒメのことを問い詰める。
サメに食べられてどうにか外へ出られたかと思えば、死んだはずの神父さまと戦う羽目になった彼にとって、現在の状況はまるで意味不明だった。
「それも、部下になるのなら教えてやっても良いぞ」
「騙されちゃだめだよノア! きっと、この人達がルーテお兄ちゃんとミネルヴァお姉ちゃんの話してた『おさかなにんげん』だよ!」
「…………ッ! 貴様、何故それを……ッ!」
声を荒げるオトヒメ。
「あなたは、そこに居るおさかなに命令して人を襲わせてる悪い人達なの!」
「……いや、それは違うぞ」
「嘘ついたってだめだもん! ノア! この人もやっつけよう!」
レアは勝手にそう決めつけて、一人で盛り上がる。ルーテと明丸の教育による影響もとい、成果が出始めていた。
「お、落ち着いてレア。……とにかく、ぼく達はあなたの部下にはならないよ」
ノアは、レアのことを宥めつつそう返事をする。
「そうか……。いくら力を持っていても、やはりまだ子供じゃな」
対して、交渉が決裂したオトヒメは不機嫌そうに呟いた。
「ならば好きにするがよい。ジェリーとスクイードが戻って来たらお主らのことも始末させ――」
刹那、轟音と共に部屋の扉がぶち破られる。
「――――え?」
そして、自分の触手で体をぐるぐる巻きにされた巨大クラゲと巨大イカが部屋の中へ飛び込んできた。
「シースルー、捕獲完了です!」
「ルーテお兄ちゃん!」「ルーテお兄さん!」
少し遅れて、全ての元凶であるルーテが元気よく部屋の中へ乗り込んでくる。
「あ! 二人ともやっぱりここに居たんですね! か弱い少年少女を誘拐するだなんて……許せません!」
そして、簾の向こう側に居るオトヒメを睨みつけた。
「あれは……漆黒の金槌……!」
身動きを封じられているスクイードは、ノアが持っていたハンマーを見て目を輝かせる。
「
一方ジェリーは、軽々とハンマーを持っているレア達を見て、不思議そうに首を傾げた。
二人とも、揃ってルーテに捕獲された割には、かなり呑気である。
「ジェリー! スクイード! 一体何があったのじゃ!?」
「漆黒の誘拐宣言」
「
「何ということじゃ…………!」
かくして、残る敵はオトヒメ一人だけとなったのだった。
「ノア! レア! 僕が来たのでもう安心してくださいね!」
「そ、そんなことよりルーテお兄さん。……ミネルヴァお姉さんはどうしたの?」
「あ…………!」
*
一方その頃、ミネルヴァは。
「レアぁ……ノアぁ……ママぁ……みんなどこに居るですかぁ……。急に静かになってしまったのですよぉ……!」
未だに盲目状態で屋敷の中を彷徨っていた。
果たして、彼女は無事に皆の元へ辿り着くことが出来るのだろうか?
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