第42話 経験値、襲来
「うぐ……効きました……たぶん25ダメージくらい受けてます……!」
派手に吹き飛ばされたルーテは、ぼろぼろになりながら立ち上がる。
「み、みなさん……無事ですか……?」
そして、周囲を見回しながら呼びかけた。
すると少し離れた所に倒れていたゾラが返事をする。
「ボクは大丈夫だけど……マルスはちょっとダメかも」
「あは……あはは……!」
「……ほらね」
ゾラは幸せそうな顔をしたまま仰向けに倒れているマルスを指差し、肩をすくめた。
「吹っ飛ばされたのに晴れやかな顔してるもん…………」
「……いいえ、マルスは主人公だから絶対に大丈夫です!」
しかし、ルーテは断言する。
「何その謎の信頼……こわ……」
「――そんなことより花丸……花丸ちゃんは明丸に戻りましたか?!」
それから、目を輝かせながら実験結果を聞いた。
「さあ? ……そういえば花丸ちゃんどこ行ったんだろ? ――も、もしかして消し炭になっちゃった?!」
「いいや、私ならここに居る」
するとその時、着物に着替えた明丸が家の中から姿を現す。
「おー! 成功したのですね!」
歓声を上げるルーテ。
「……ありがとう。そなたらのおかげで私は完全に復活した。もう
「じゃあ、呪いの装備とやらは脱げたってこと?」
「……というか、爆発で丸ごと吹き飛んでしまったよ。――だから急いで着替えたのだ」
「ふーん。……なんか残念だなー」
花柄の浴衣が消失してしまったことを知ったゾラは、つまらなそうに呟いた。
(もしかして……最初から装備だけ破壊すれば脱げたのではないでしょうか……?)
一方、二人のやり取りを聞いていたルーテはそう考える。
(まあ、どちらでも問題ありませんね!)
そんな彼の元へ、明丸が駆け寄って来て言った。
「ルーテ。これでようやく稽古を再開できるな! 叩きのめしてやるぞ!」
「僕で溜まった鬱憤を晴らそうとしないでください」
そこで、ルーテはふとある事に気づく。
「……稽古といえば……師匠はどこに居るのですか?」
「ああ、今は居ないんだ。……よくは分からないが、町はずれで起きた地割れの調査に腕の立つ用心棒が必要だとかで……朝早くに出て行ったよ」
「………………!」
話を聞いたルーテ達は、一斉に緊張した面持ちになる。
「地割れだって……?!」
寝ていたマルスも起き上がった。
「ね、ねえルーテ……それって前に話してたやつじゃない……?」
「はい。……どうやら、すでに起き始めているみたいですね……!」
ルーテはそう言って下を向く。
「元気出せよルーテ! 俺たちも強くなってるし、いつ亀裂が発生しても大丈夫だ!」
マルスは、落ち込むルーテの肩を叩いて励ました。
(……やはりミネルヴァを味方にしても
しかし、彼は未知のボスに心を躍らせているだけだった。
(個人的には凄い大きい化け物と戦いたいです! 触手とかも沢山うねうねしていて気持ち悪い感じのビジュアルにしてください!)
頭の中で空想上の最強ボスを作り上げ、にやにやするルーテ。
――ちなみに、レジェンド・オブ・アレスに登場するボスの中だと、覚醒したミネルヴァが最強である。
彼女こそが正真正銘のラスボスであり、隠しボスや裏ボスなど存在していない。
というより、そもそもミネルヴァが真ルートを辿った時にだけ戦える真のラスボス――要するに裏ボスのような存在なのだ。
一周目で偶然、真エンドのルートに突入してしまった彼はその事を理解していない。
(裏ボス……首を洗って待っていてください!)
だが、この事実は知らずにいた方が幸せに過ごせるだろう。
「そなた達……一体何の話をしているのだ? 地割れについて何か知っているのか?」
「……そういえば、明丸には説明していませんでしたね」
明丸の問いかけで現実に引き戻されたルーテは、彼にもこの先起こる出来事について話すことにした。
*
「なるほど……そなたには未来に起こることがぼんやりと分かるのだな。……それで、近い将来、魔物を生み出す大きな地割れが世界中で発生することを知ってしまったというわけか……」
「まあ、だいたいそんな感じです!」
「ふふ、そうか。……だからそなたは強くなりたいと願うのだな。――やはり、師匠の言う通り、護るべきものがあった方が強くなれるのかもしれん」
「…………え? 強くなる為に必要なのは護るべきものじゃなくて経験値とプレイヤースキルですよ?」
一人で納得する明丸に対し、首を傾げるルーテ。
「――で、でも……それならじーさんは大丈夫なのかよ? 地割れの調査って……危ないんじゃないか?」
マルスは、心配そうな顔をしながら言った。
「いいえ、師匠は今の僕たちよりずっと強いので問題ないと思います!」
それに対して、ルーテが説明したその時。
「――ジジイより自分らの心配した方がいいぜえぇ?」
「君達は我々に美味しくいただかれてしまう運命にあるのですからね」
どこからともなく、二つの声が聞こえて来るのだった。
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