第3話「嫁の冷蔵庫」
年に何回か訪れる嫁の自炊モードがマジでムカつく。
嫁の行動に計画性はない。
無計画に食材を買い込んでくる。
「どうせ、また腐らせるんだから、高くても少ない方、買った方が結局損がないだろ」
こんな風に言っても嫁はまた、“こっちの方がお得だから”と1パック10個入りの卵を買って来た。
「マジで勘弁してくれ~……」
そりゃ、ため息もでるわ!
「大丈夫、大丈夫。卵は何にでも使うから」
と言う嫁。
「何にでも使えても、どうせ、何にもしないだろ」
「分かった、分かった。ちょっと休憩するから、袋の中身冷蔵庫に入れといて」
そう言って、ソファーにドスンと座り込みテレビを観ながら、スマホをいじる嫁。
ここからの押し問答は、もはや伝統芸能の域に達している。
「やんないから」
「やれ」
「やんねーよ」
「やれよ!」
「やだっ!」
「アイス入ってるから、溶けちゃうから早くして頼む」
「アイス食べていいの~?ありがとう~」
「ダメ!」
「何で?」
「ダメに決まってんだろ!いいから早くしろ!」
「チッ、外で人をこき使う事ばかり覚えやがって」
こっちの言う事も聞きもせず、嫁はインスタだか何だかわかんないが、動画を観て『かわいい』とか『おもしろ~い』と言って一人の世界に没頭している。
てか、音がうるさい。耳が遠いのか?バカなのか?もしくは両方か?いや、確実に両方だ。
ぐーたらしている嫁に、僕は予言を伝えることにした。
実は、僕は予言者だ。
嫁の未来の事なら、大体当たる(笑)
「ならば、お前に予言を授けよう。貴様のお料理やる気スイッチは、今日限りで終わり。2週間後も我が家の冷蔵庫で、卵たちは、平穏な日々を過ごす事が出来るであろう」
「すなわち、貴様は、この卵たちの救世主とならん事を」
「ハッ?卵10個なんて瞬殺だから。ていうか、キサマって言うな!」
そして、時は過ぎ。またしても僕の予言は的中してしまった。
あれから、卵たちは、賞味期限から3週間が過ぎ、現在、5個冷蔵庫にある。
その事を、嫁に告げると、どうせ『忙しかったから』とか『なんで使わなかったの?』と責任転嫁をされて余計にムカつくから、こういう時は、手っ取り早く黙ってゆで卵にしてしまうのが吉だ。
一流の予言者は、その予言が当たったとしても、決して他人にひけらかさないのだ!!
人知れず、嫁の買って来た賞味期限切れの食材を処理する僕だが、稀に賞味期限が過ぎてないのを使ってしまい、キレられてしまう。
キレられると、ムカつくから、案外まだ手付かずの物も冷蔵庫に放置されている。
この際なので、嫁が買って来た食材で、賞味期限の切れた物をピックアップしてみることにした。
・お弁当用切れてるだし巻き玉子:賞味期限4月10日
・豚汁の素:賞味期限4月7日
・豆乳ヨーグルト:賞味期限4月6日
・豆腐:賞味期限2月18日
・塩こうじ:賞味期限2021年10月16日
塩こうじを発見した時、僕は特に憤りを感じた。
嫁は、大して料理もしない癖に、流行りに乗せられやすく、こんなものが一回も使われず放置されているのだ。
腐った食材を、ビンから中身をほじって捨てるのは、一体誰だ?嫁はまずやらない。
結局、僕がやることになる。そう考えると、憂鬱だ。
その後も、冷蔵庫長期滞在者が軒を連ねる。
・味噌汁の素:賞味期限2021年1月27日
・へ〇リーゼ:賞味期限2019年2月
なんだろ……川平慈英に本当に申し訳が立たない。
豆腐もあるし……
仕方ない、今日は豚汁にしよう。
食材の出どころは嫁にはナイショ。
余談になるが、最近、焼き芋が流行ってるらしい。
御多分に漏れず、嫁はサツマイモにハマっている。
今月もまたサツマイモの芽が芽吹いた。
完
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