第2話「嫁、tiktokerになる」

 嫁がフェイスパック中、スマホをいじっていたので、TikTokに上げてみた。


 曲は、J.Sバッハより『主よ人の望みの喜びよ』

 動画の時間は1分。


 清く流れるピアノの旋律から始まり、真っ白な嫁が、仏頂面でスマホをいじってる様子が映し出される。


蛍光イエローのTシャツ、お前それどこで買って来た?と言いたくなる。

下はパンツなので、映らないようカメラワークが大変。


 いつも、ポカ~ンとアホみたいに開いた口は、フェイスパックが、言わば拘束具の役割となり、今はしっかりと閉じられている。


 その唇は、まさにキン肉マンの様。


 そんな思いに耽っていると、カメラの視線に気付いた嫁。


 顎をクイッとあげ、見下すようにギロリとこちらを睨む。


「何?文句あんの?」

 不機嫌そうな一言。


 しかし、すぐにスマホをいじり、沈黙が続く。

 こちらを気にせず、右手でスマホを操作する嫁。

 無関心を決め込んでいるようだが、右腕をしっかりと掴む左手の様子を伺う限り、かなり警戒をしている。


 その後、沈黙は、28秒続く。


 忙しなく、動く、親指の縦スクロールは、3回(微調整含む)。瞬き6回。

 全然、集中出来てないことがわかる。嫁はかなり、ウザそうだ。


 黙ると、カオナシにそっくり。


 さすがに、痺れを切らしたのか、顎をクイッとあげ、見下すようにギロリとこちらを睨む。

 さっきと全く一緒の動き。


「やめてよ~」

 こちらをジロジロと見る嫁。


「てか、お腹出すぎじゃない?」

 そんな、嫁の一言に


『お前もな!』

 咄嗟に出てきそうな、心の声を我慢する。


 そう言い終えると、またスマホをいじりだす嫁。


 ― 撮影終了 ―


 こんな、何気ない動画だが、なぜかバズった。

 嫁には、まだナイショ。

 てか、言えるはずない(苦笑)


 完

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