状況確認

 脳内レポートNo.157

 複雑になってきた脳内状況整理。


【世界情勢】

・デストロイヤー侵攻による陥落地域は『ユーラシア大陸』『アフリカ大陸』『南アメリカ』だ。日本は『九州』『四国』『中部』。


【勢力図】

・現在、世界は大きく分けて四つに分けることが出来る。

『関係ない者達』

・一般人や衛士、階級の低い防衛隊や研究者などが該当。彼らは何も知らず、自分達の日々の仕事をしている。


『オルタネイティブ3および4計画推進派』

・デストロイヤーなどの研究や実験によって、人類の技術力を向上させ、あらゆる手段を用いて地球を人類の手に取り戻す計画だ。

その根幹は『衛士の量産』『衛士の強化』『ネストに棲むアストラ級デストロイヤーを破壊する兵器の開発、運用』『ラージ級以上に有効な通常兵器の開発』『多数のデストロイヤーを掃討する通常兵器の開発』


『研究派閥』

・他者のあらゆる利益を無視した己の研究意欲のみを追求した研究を進める一派。GE.HE.NA.の過激派が多く所属し、世界各国に潜入している。その恩恵と被害は被害の方が大きいとされている。


『オルタネイティブ5推進派』

・全てのネストへ全ての核ミサイルを発射して効果が見込めない場合、脱出を目指す者達。どこへ行くか、デストロイヤーの発生を抑えられるか、など現在研究中のことも含めて、地球が完全に終わる前に逃げる計画。その為、余力があるうちに計画を発動する必要があり、急進派はデストロイヤーの進化を恐れて二つの勢力に圧力をかけている。


【一ノ瀬真昼の現在の状況について】

・味覚の喪失、腕の欠損、脚部の負傷。


・夕立時雨のラプラスによる力の譲渡によって適正数値300を維持。高いパワーと耐久力を得る。またラプラスの基本能力に加え記憶操作や光の翼を発生させてラプラスの力を増幅させることが可能。


・アクティブイーグルUC型パワーアシストアタッチメントを装備。デストロイモードに変更後は赤く発光してビームサーベルとビームマグナムに分離する。


・所属レギオンは一ノ瀬真昼隊(ヴァルキリーズ)だが、今は休止状態。しかし訓練や臨時メンバーとしての参戦など個々で活動を続ける。


・GE.HE.NA.とはクレスト社を通しているので、3および4の計画に協力していることを知る者はGE.HE.NA.上級研究者と3および3推進派幹部、またイェーガーの一部の衛士のみ。


・神凪の宮川高城への命令権。


【一ノ瀬真昼の最終目標】

・ネストの破壊とアストラ級デストロイヤーの殲滅。

・一億人までに減ってしまった地球人類の再興。

・一ノ瀬真昼ならびに戦死者、地球再興を頑張った人達が報われる平和で安定した世界環境の整備。


【一ノ瀬真昼の段階目標】

①XM3型強化衛士の配備50%以上。

②衛士運用の規格化と装備や技術、戦術、知識の共有、強化、改修。

③GE.HE.NA.内部の派閥の解体と新体制の確立。

④デストロイヤー保護団体などの利敵組織の壊滅。

⑤人類の対デストロイヤー戦略の大幅な見直しと現実的で最善のプランの模索

⑥人類総力戦の宣言

⑦ネスト攻略作戦を目指した準備、開始。


【直近の予定】

・クレスト社並びにGE.HE.NA.の企業連合が作成した新型義手の獲得。また脚部を補助するパワーアシストアタッチメントの試着。

・横浜衛士訓練校、神凪衛士訓練校、イェーガー衛士訓練校のレギオンリーダー合同会議。

・首都防衛構想への出席。



「こんなものかな」


 真昼は頭の中を整理し終えると部屋を出た。

 真昼は横浜基地の内部を探索していく。すると同じく警備任務についていた優珂と鉢合わせた。


「真昼様、お疲れ様です」

「お疲れ様。優珂ちゃん、だったよね。どう? もう手術は受けた?」

「はい。昨日受けました。宮川高城と同じように経過観察ではありますが、問題はありません。今の私は金色一葉や序列下位どもとはもう比べものにならないでしょう」

「そうだね。けどこの計画を進めていくと同じ力を手に入れるから努力辞めちゃダメだよ? せっかくここの警備をするまで信頼されているんだから。恩恵も大きいでしょう?」

「はい。前とは比べ物にならない高待遇です」

「警備任務は周回? それともその場待機系?」

「その場待機ですね。ここで警戒をしています」

「そっか、ならちょっと待ってて」


 真昼はそう言い残すと、横浜基地の自動販売機からお茶を買う。そしてそれを優珂に渡す。


「何が好きかわからなかったから無難にお茶で」

「すみません、お気遣いかけてしまって」

「いいよ。ここは暑いし大変でしょう。私がいるから、ちょっと休憩しよう」

「ご配慮ありがとうございます」


 真昼と優珂は椅子に座った。


「優珂ちゃんは何でGE.HE.NA.に? ここは悪いところって噂聞いてたでしょ」

「私は元々防衛隊で、強化衛士になるきっかけがあって、そのまま流れでって感じです」

「流れか。流れなら仕方ないね。抗い難いからねぇ。今は計画のことはどのくらい知ってあるの?」

「ここで最新の実験をしている、という事くらいです」

「そっか。ならあんまり話せないね。まぁ、すぐ知ることになるけどさ」

「気になります」

「探ったらダメだよ。自分の身のためにも。言われたことをしっかりやる。流れで始めた事でも、自分が良い方向へ進んでいると感じているならやり続けるんだ。最善を尽くせ、だね」


 その言葉に優珂は目を見開く。


「本当に、その言葉をお使いになられるんですね。プロタガンダかと思っていました」

「えー、酷いなぁ。あの衛士特集に書かれていたことはほぼ事実だよ。プロタガンダなのは間違いないけど嘘は言わないよ」

「すみません」

「いいよ」


 風が二人を流れていく。


「真昼様は、お辛くないんですか?」

「辛い?」

「戦って戦って戦って。腕を失い、足を損傷して、そしてGE.HE.NA.に協力する。ラプラスという能力があるから」

「そういうことね。私はもうこういう生き方しかできないからね。お姉様も見ているし、格好悪い事はできないよ」

「お姉様」

「夕立時雨お姉様。私が幻覚を見るって知ってるかな? 私には時雨お姉様が見えるんだ。死んだ後もずっと私を見守ってくれている」

「……特集で拝見しました」

「ははは、優珂ちゃんの話は何かないの?」

「そうですね。金色一葉が嫌いです」

「金色一葉……今のイェーガー女学院序列一位の?」

「はい。いちいち口出ししてくる理想主義者で馬鹿みたいに真面目で努力家で、うんざりするほど耳障り良い言葉を現実にしようとする愚か者です」

「ははは! そっかそっか! それで言ったら私も理想家だよ。最善を常に尽くせ、なんて理想でしかないよ。それが、できれば苦労しないってね」

「でもそれを実際に成し遂げて、数々の偉業を達成されました。真昼様は凄いです。私の憧れです」

「後輩にそう言って貰えると嬉しいねぇ」


 優珂は時計を見る。すると立ち上がる。


「すみません、そろそろ」

「はい。行ってらっしゃない。また今度ね」

「はい。またお会いしましょう」


 優珂が去った後、真昼は横浜基地の探索を続けた。

 機密保持レベルの高いエリアに歩いていく。

 下に。

 さらに下に。

 そこには水槽があった。

 ゲージに入れられて、ぷかぷかと浮いている。

 そこには人間がいた。

 同じ顔、同じ形、同じ同じ同じ同じ同じ。

 クローン。

 量産型衛士。

 デストロイヤーの姫。

 彼女達が次世代の兵器だ。

 真昼は使い潰される命を見て、罪悪感を覚える事なくその場を去った。

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