004
今日は始業式だけなので午前中に終わったので家に帰るために飛鳥と私は早々に迎えに来ていたシェルファの運転する車に乗り込んだ。
「ちーちゃんの家に来る予定早まったけど大丈夫?」
車に乗り込むと同時にシェルファに飛鳥は私が家に行くことになったことを伝える。彼女はバックミラー越しに二人を確認すると、
「朝方にその可能性は示唆されていましたので昼食の準備も整っています。どうぞ久方ぶりの逢瀬をお過ごしください」
「ちょっとシェルファさん!? 逢瀬じゃないから! 機械の設定をやるだけだから!」
「? ですが千尋様はマスターに頼まれて私の定期メンテナンスされた際n「ワアー! 言っちゃダメ」
車を動かし始めるシェルファのが二人の時に話した飛鳥に聞かせるには恥ずかしい話をしようとしていたので全力でかき消すために私は大声を出した。
「えーその続き聞きたいな~」
「絶対ダメ!!」
飛鳥は続きが気になったのかとてもニコニコしながら車を自動運転に切り替えたシェルファの方を向くが私はそれを全力で拒絶した。飛鳥はその言葉に残念がることもなくにぱーっと効果音の付きそうな笑顔で、
「たぶん、ちーちゃんが僕のことが大好きって話だよね? ならいいや。僕もちーちゃん大好きだからね」
たとえどんな中でも聞かれたくないことも有るというのは飛鳥も理解はある。無理やり聞いて相手が不機嫌になるよりずっといいという考えらしい。
飛鳥はそれが図星のかさらに顔を赤くした上、まっすぐなド直球の言葉とメンテナンスをしていた時の話の内容を思い出し茹蛸になってしまった。
「うう~ 眩しすぎて飛鳥の顔を見れない」
千尋はそう呟きシェルファの方を向くと彼女はバックミラー越しに飛鳥の方に視線を送って、「んん」と尊いものを見るような顔をしていた。そして千尋の視線に気が付くと一瞬だけ彼女に向けて笑みを浮かべた。
その様子シェルファの意図を理解した。今日はマナの濃い日だ。そして飛鳥の魔力密度はとても他の生徒と比べると高濃度なのでそれに当てられると他の人が魔力酔いを起こす。
なので始業式の最中は出来るだけ魔力が漏れないように制御していたのだ。ジェリーの吸魔が有るとはいえそれはとても精密な作業なので飛鳥は少し疲れた顔をしていた。しかし、話の後はすっきりした顔をしている。そして千尋も恥ずかしい思いはしたが直球の言葉は嬉しい物でありどちらも得をした感じであった。
「全くもう」
この1年で随分と感情が育ったものだと思う。それを先日飛鳥に言ったら「感情の薄い子を相手にするのは慣れたものだよ」と言っていた。それに関しては世話になったものだと思う。シェルファを横目に千尋は、この後飛鳥の家でやる作業を頭の中でまとめつつスケジュールの確認をし始めた。
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飛鳥の家での作業を終えて飛鳥の作業の手伝いをして夕食を食べた後、私は急いで飛鳥の家の一室でパソコンを立ち上げてある準備を始める。
そして出てきたのは一つのキャラクターの立ち絵。カージナルレッドの前下がりショートボブの髪に二本の角が生え所々露出のある甲冑の様な和装を着ていて包帯で目を隠してる女の子のアバター。そのアバターを動かすと包帯が少しずれて下にある黄金の瞳がちらりと見える。
鬼姫ぽらり それがこのアバターの名前。とある研究所で男の体にされてしまい、なんやかんやあって女の体に戻れたその後食い扶持を稼ぐためにVtuberを始めたというのがキャラクター設定である。
内容としてはゲームやダンジョンの動画検証をやっている。始めた当初はいろいろあり風当りが強かったが、今は5年目になり俺っ娘鬼キャラとして有名になりチャンネル登録者数50万人を超えている個人Vtuberである。
こんなそのままの設定でいいと思ったのところはある。だが性同一性障害を持つ私は体に嫌悪感は薄いが違和感は有る。飛鳥達は私を女の子として見てくれているが、Vtuberをやっていればその間は皆から女の子として見られ日常生活のストレスの発散にもなると提案されてこの活動を始めた。
「それでですね~」
どうやら一緒に始める予定だった配信はもう始まってしまっているらしい。シェルファの料理が上達していたのでさらに良くなるようにアドバイスをしていたら時間を忘れてしまっていた。一応謝罪の言葉はSNSで送っておいたのだけれど
ピロン♪
「おや?」
「みこママ通知が鳴ったみたいですよ?」
「そのようだね。ようやく待ち人が来たようだね」
「いったい何をしていたんでしょうか?」
「大方予想はついているが、ナニということにしておこう」
『20分の遅刻』
『やっと来たん?』
『何してたんだろうね』
『通知では友人に捕まってたという胸だったが』
『そりゃあ、ナニだろう』
画面には二人の少女の立ち絵が並んでおり、雑談配信が行われていた。片方は私のアバターと天結らいじゅの制作者である私産峰みこと、彼女の立ち絵は赤いセーター着て、ゆるふわパーマの白髪に青い目を持ち表情は少し眠たげな表情をしている。
タイトルには【産峰みこと】守衛ゆいかと鬼姫ぽらりのママを労う会【お仕事お疲れさま】
と書かれており
毎回彼女の産み出した子が労う配信回が行われるのが通例となっていて今回がこの娘、そして相方として呼ばれたのが私だ。
飛鳥に遅れた理由に使っていいとは言われたものの、これからデビューするのにいらない印象を視聴者に抱いてもらうのは良くないのでチェックを完了して意識を切り替えて配信に加わる。
「ワリィ遅れた」
「弁明は有りますか?」
『ヒィ!』
『怒ですな』
『そらそうやな』
配信に入るや否かゆいかが私に向けて圧を乗せて声を掛けて来た。コメントもそれに合わせて盛り上がり始める。私はこの状況はヤバいと思ったので情報を出すことにした。
「今日の配信にも関係あることをやってたら遅れた。反省はしている」
「? 関係あることですか?」
「やはりか」
『裏作業的な?』
『みこママ何か知ってる感じ?』
『……気になる』
『何やってたん?』
コメントの方でもこの配信に係わることでということでそっちの方に気を取られて気になる雰囲気になっている。そこにみことさんからも助け船が送られる。
「そう言えばあとでらいじゅ君に私を紹介したのは君だったね」
「らいじゅと言えばみことママの新しい子でしたっけ」
「そうそう。まあ紹介だけで交渉は彼奴だけでやったけどな」
『らいじゅ……ぽらりの友人の話に出てたな』
『ぽらりの話に出てくるからSNSでフォローもしてるよ』
『装備創ってる子だよね?』
『みことママのデザイン使ってるよね』
『え? その子がデビューするの!?』
『全く情報出てないんだけど!?』
『マジか!?』
『早く言えそうしたら遅刻の件は大目に見よう』
『上から目線には草』
みことママの言葉を切り目にコメントの方も新しくデビューする子に興味が完全に向き私の遅刻の件は完全に流せる感じになった。
「だそうですよ。きびきび話しなさい」
「はいはい。遅れたのは俺のせいなので出せる部分は出していきますよ。と言ってもこれを言ったらそれの話題だけでいっぱいになるだろうがな。丁度いい面子だし」
「ん? もしやあれを言うつもりかい?」
「何か問題ある? あっそれと情報出さないように言ってたのは俺だ。毎日注意するのは大変だったぜ」
「いや私もそれを追うと思っていたからね丁度いいよ」
「いい面子と言うことは私も関係しているんでしょうが、私だけ内容分からないんですが?」
『ゆいゆいも上から目線ww』
『そう言えば隠し事がへたというか素直なんだっけ? コメントも素直に返してくれるし』
『確かにそれなら下手に情報出させるより隠す方がいいかもしれないな』
『あれ?』
『いったい何のこと?』
『ゆいゆいだけ把握してない感じ?』
『みこママとぽらりん裏で打ち合わせしてた?』
『仲間外れ?』
『ゆいゆいかわいそうに……』
打ち合わせはしていたがらいじゅの紹介の流れの確認だけで別に何を話すかまでは打ち合わせてはいない。だがらいじゅを宣伝するにあたってこれが1番の宣伝になると思っている。みことさんもその考えだったみたいなのでここで意見が一致してよかった。
「もちろんゆいかも関係してるぜ」
「ああ、そうだな。むしろあの子のおかげで今のゆいかが有ると言っても寡言ではないからな」
「え? ……っえ!? ってことはうち合わせでこの衣装を指名されたのって」
「そう言うことだな」
『その子のおかげで今のゆいゆいがある?』
『ってことはつまり……』
『ナッ、ナンダッテー!?』
『rsnyht』
『ちょっと確認してくる』
『んxfgbbtd』
みことさんの言葉のおかげでゆいかも内容が分かったらしく今一番の驚きを示している。視聴者も驚きのあまりおかし文字がちらほらとみてとれる。中には確認しに行こうとしている視聴者もいるようだ。
「あっ今日は電源切るように言っといたし今頃作業に集中してるから気付かないと思うぞ。チャンネルは今日から開いてるから登録してやってくれな」
「まあ妥当な判断ではありますね。流石に迷惑になりますもの。私も配信が終わったら登録しときましょう」
「私もそうしよう。因みにその子に聞いた話だが、ぽらりの設定を考えたのもその子らしいぞ?」
「ちょっ!? みことさん!?」
『確かに迷惑』
『そうだな。ごめんなさい』
『はい?』
『つまりらいじゅは、ぽらりんとゆいゆいの兄弟でありながらぽらりんのパパ?』
『複雑な関係!』
『気になるから早速チャンネル登録してきた』
さらにみことさんから爆弾が追加されてコメント欄が加速するそしてこの配信はトゥイッターのトレンドに乗るほどの勢いを見せたのだった。
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