病弱付与術師のVtuber生活
@yumeria_akira
第一章 始動
001
「ケホッ。みなさんご機嫌うるわしゅうございます。今日も病弱付与術師であるボクの配信を観に来てくれてありがとう。コホコホ」
『こんばんはー』
『もうこの配信がなきゃスッキリできない身体に成ってしまった』
『コホコホ助かる』
『大丈夫?』
『今日はマナ濃いからね』
『つまり今日はいっぱい注いでもらえるんですね!』
『いよ! 迷宮時代のVの申し子!!』
現代にダンジョンが発生して約20年。いまだ謎が多く残っており注目はダンジョンに向いている中、僕はVtuberをやっている。
しかもかなり人気だ。
二つあるホログラムタイプの液晶の片方には皆の思い思いのコメントが飛び交っている。
個人勢なのにもうチャンネル登録は100万を超えてもうすぐ120万も見えてきている。中には知り合いや研究機関の人たちもいるだろうがそれでいても破竹の勢いである。
ほんとちょっとした思い付き程度だったんだけどな……
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事の発端はとあるダンジョンのドロップしたスキルブックだった。
その休日に通っていたのは既にマッピングされている計5階層の機械系の魔物が現れる、1日あれば僕でも一人で踏破できるダンジョンだ。
魔物を倒すと光になって消えるのだがその際に魔核と確立でドロップ品やスキルオーブを落とすのだが、最終階層にいるボスを倒した際それは起きた。それを確認した僕は急いでギルドにスキルオーブの鑑定をしてもらいに行った。興奮と激しい運動により吐血してお世話になっている職員に心配されてしまったが。
ダンジョンドロップの装備やオーブには討伐者に有効なスキルが出ることがある。その時に関しては確実に付いていることが分かっているので当日鑑定をしてもらった。
その結果判明したスキルはギルド職員ですら驚くものだった。詳細はここでは伏せるが検証の結果、このスキルを持っていることで効果は落ちるがスピーカーで聞いている人に付与術の効果をもたらすことが出来た。その時ギルドにいた皆さん現地協力ありがとうございました。
僕の現状を吟味していつもお世話になっている職員に冒険者がダンジョンの配信を行っているDtuberをしてみるのはどうかと相談。僕の実力と活動を考えると有る程度有名になるまで素顔をさらすのは良くないという意見が出た。誘拐犯ぐらいなら撃退出来ると思うが、最悪組織ぐるみ誘拐に来ますと言われたら身が震えるよね。
だが、諸事情により他の人よりダンジョンに入ってレベルアップする機会の少ない僕は、せっかく得たスキルと付与術師という適正職を有効活用しない手はないと食い下がった。
顔を出せないなら顔を出さずに配信すればいいと言うことで今もなおネット上で人気を誇るVtuberをするということで許可が出た。
Vtuberはダンジョンに行けない時は創作活動をお行っており、BGM代わりに視聴した事が有るので活動については多少知っている。資料として参考にさせて貰ったことも有るので絵師さんともピヨッターで繋がりを持っている。なので、アバターの作画は繋がりが有る中で波長の合う人に依頼した。
依頼した絵師さんは何故か3Dのモデリングまで無料でやらせて欲しいと言って来たのだが、そこはこちらも創作活動を行っている身として譲れないものが有った、というか両親にそう言う金銭のやり取りを徹底して教えられている。そこをしっかりやらないと後が怖いという胸の内を伝えると向こうも渋々といった感じだが納得してくれたようだ。代わりに宣伝は盛大にするとの事だった。
そして、アバターデータを作るにあたって僕の情報が必要との事だったので自己紹介も兼ねて、プロフィールを教えよう。
名前は橘 飛鳥たちばな あすか。16歳高校2年、付与術師適性のある男だよ。
身長が152㎝の体重が43㎏……ん? 小さい?
ハハッ、潰すよ?
仕方ないじゃん諸事情で幼少期体を動かせなかったんだから……
ンンッ!! 付与術師として全属性は使うことは出来るけど好んで使うのは雷属性だね。好んで使っていたおかげであのスキルが手に入ったのも有って益々好きになったよ。ちょっとなんで持ってるか分からない条件もあったけれど。
さっき言った諸事情の恩恵でお金は有るので足りない機材を揃えたり、絵師さんとVCやVtuberとしての勉強をしたり、もともとの目的のためにダンジョンに潜ったりしながら3Dモデルの完成を待つのだった。
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そんなこんなで日々を過ごしていて3ヶ月くらいたった時ついに3Dモデルの完成のお知らせが届いた。
早速データをダウンロード及び解凍しモデルの確認を行う。
まず目につくのは額から生える一本の角。髪は僕と逆の色彩で黒いメッシュが入り薄い青みがかった白を一つ結にして肩に掛け、白衣びゃくえの法衣に身を包み、金色の瞳でこちらを見つめる13歳くらいの美少女だった。
うんパーフェクトだ。服はシンプルでいい。プリッとした唇も、ふっくらとした頬も最高である。そしてと。
……え? 女性アバターだってことに文句話付けないのかって? うーん、あまり言いふらすことではないんだけど、こんな時代になっても悪いことをする人というのは出てくるんだよ。そう言うのは基本的に警察が対処することになっているんだけど、時たま潜入捜査の依頼が冒険者に来ることも有るから演技する練習になる。形から入るのが一番だろうと絵師さんに熱弁されて一理あると思ったので了承済みである。そのままでも大丈夫だろうけれど、と絵師さんが思っていたのは僕が知る術はなかった。
僕は絵師さんにアバターの感想を言うためになれた手つきでVCを繋ぐのだった。
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「先生! アバターデータ届きました……パーフェクトです。さいっっっこうですね」
「そうだでしょう? 私としても最高の出来だと自負しているよ」
私は玉置 亜里沙たまきありさ。PN産峰 みことうぶみね みことという名前で活動しているイラストレーターだ。
そして今VCで会話している子が今回の依頼人である橘 飛鳥君だ。
今から約2年前、一件のDMが送られてきた。
その内容は私の描いた絵の衣装を参考に冒険者用の衣服及びアクセサリーを作りたいので使っていいかという内容だった。
詳しい内容は今言う必要は無いだろうから省くけど。それが名前を広げるチャンスと思い私は許可を出した。数か月後、サンプルとして送られて来た物の材料を聞いた時には度肝を抜いたのだけれど。
それが彼との出会い。冒険者なのでまさかDtuberでなくVtuberになるとは思ってもみなかった。
あのサンプルを考えると今回の依頼は無料で受けてもいいと思えのだが彼はサンプルはサンプルと言うことで頷いてはくれず、その上親も商売人ということで金銭に関しては厳しいと聞いたらこちらが身を引くしかなかった。
その代わり使えるコネはすべて使い盛大に宣伝することにしたけれど。
そんなこんなあって現在に至り依頼を果たしたところである。
感情が暴走しそうなのを抑えながらアバターの感想を言っている彼のかわいい顔を想像し、頬を緩めながら私か素直に頑張ってほしいと思うのだった。
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