セピア色に輝く笑顔のひと
悠馬君のおじいさんの静かながらも言い知れない迫力に、わたしは言葉をどのように返せばよいのか一瞬戸惑った。
「あ、あの、これは
「あぁ、ご存じでしたか? 」
「はい。見せてもらいました」
おじいさんは自分を鎮めるために一呼吸置くと背後にある仏壇のほうを振り向きながら静かに話し始めた。
そこには2枚の写真が飾ってあった。
1枚は25歳くらいの若い女性、もう一枚は少しセピア色になってしまった若い青年の写真だ。
「実は悠馬が持っているのは私の兄・『
「そうだったんですか。受け継いでるなんて凄いですね。でも私が持っているのは最近の新商品なんです。昔にも似たようなマスコットが売っていたんですね? 」
「ほ~....そうですか。でも私が子供の時に持っていたのとそっくりなんだよなぁ」
もう一枚の写真の若い女性は悠馬君のお母さん・瞳さんの写真だった
台風が接近した真夜中、瞳さんは予定日よりもかなり早く破水してしまった。
ますます荒れ狂う台風、沿岸沿いは通行止めとなり、病院への救急搬送はかなり遅れてしまった。
瞳さんの弱りきった体力は悠馬君をこの世に送り出すだけで精いっぱいだった。
もう少し適切な処置さえできていれば助かったかもしれない。とおじいさんはお線香を上げながら語っていた。
「ギャーッ!! 悠馬君! もう一回だ!! 」
テレビの前で、莉子と悠真君は釣りゲーム対戦をしていた。
ここに来てまで釣り対戦するなんて....
..と、いつの間にかわたしも参戦して、そのうちおじいちゃんまで巻き込んで『
ゲームが得意な莉子が優位に勝負を進める中、悠馬君チームはおじいちゃんが足を引っ張り対戦結果は、僅差でわたし達の勝利となった!!
「悠馬君、今日はとっても楽しかったよ。お父さんによろしく言っておいてね」
「お姉ちゃん、今度は本当の釣りで勝負だ! 明日、堤防で待ってるよ! 絶対来てね! 」
「わかった! 受けて立つ! 」
わたし、莉子、悠馬君はグータッチの約束をした。
「おじいさま、今宵はこれで失礼いたします」
莉子がちょっと気取りながらあいさつをしている。
「やだなぁ。『おじいさま』なんて私も若い子には名前で呼ばれたいもんだ。ちなみに
「和樹さん!ありがとうございました」
おじいさんがグーを突き出したのでタッチした。
「いやだわ、この人、年甲斐もなく.. 若い頃みたいに! 」
「俺はまだまだ若いぞ! 」
おばあさんの言葉にワントーン高い声になる和樹さん。
大きな笑いが起きる中、わたし達は『佐野家』を後にした。
「智夏、仏壇のほうで何を話してたの? 」
「ん~.. この『かえるのピクルス』の事。何でも和樹おじいちゃんには若くして亡くなったお兄さんがいたんだって。そのお兄さんの形見らしいよ」
「へー、そうなんだ。昔からあの人形ってあったのかな? ま、カエルなんてマスコットにしちゃえば似たようなもんか」
そんなもんかなぁ....
わたしはあのお兄さんのセピア色の笑顔を見たとき、どこか懐かしいような気持ちになっていた。
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