夏はやっぱりビーチだよ!(莉子・談)

夏はやっぱりビーチだよ!(莉子・談)


白い砂浜、水色の海水。


智夏ちなつ、やっぱり堤防よりビーチだよ。正解は! 」

「そお? 人多くない? わたしは堤防でもいいけど? まぁ、ゴツゴツしないから寝そべるのにはいいけどね」


叔母さんに午後の手伝いを休ませてもらい、わたしたちは悠真君に連れられて『るるるサンライズビーチ』通称『るるビーチ』に来た。

この日は快晴が過ぎるほどの快晴。


しかし.... まさかこの水着を本当に着る事になるとは..

伊豆にいく前々日に莉子に連れられて水着を買いに行ったのだ。

わたしが地味目のワンピースを手に取ると、莉子りこが大反対。



——『だ・か・ら・今は私たちの夏なんだから、やっぱりビキニ一択だよ。しかもちょっと攻めようよ』——



などという言葉に何で乗ってしまったやら....


わたしは水色のバンドゥビキニを購入。


わたしより胸がある莉子はクロスを購入した。

しかもレッドウッドのかなりセクシータイプ。



「ねぇ、莉子、上着着ないの? 変なのに目付けられるよ? 」

「何言ってるの? 上着着たらこの水着選んだ意味なくなっちゃうでしょうが! 智夏もパーカーなんか脱いじゃおうよ」


「絶対に嫌。それに悠真君が一緒なんだよ。莉子のは教育上よろしくないと思うけどね」

「そんなことない! 健全な男子にはこれくらい」


そんな事言っている間に莉子の豊満すぎる胸に男どもの目線が集まっている。


「こんにちは。君たち2人? 俺ら、ほら、あそこの2人と俺で3人なんだけどさ、よければ——」

 

ほら! さっそくおいでなすった....


「おねーちゃーん!! こっち!こっち! パパもいるよー! 」


ナイス! 悠真くん。


「なんだ!? ファミリーか! そんじゃね 」

「ごめんね。またねぇ.. バイバイ.... 」


「ほら、莉子、いつまでも愛想ふりまくな! いくよ! 」



「これは! 悠真が友達連れて来たっていうから.. まさかあなたたちのような素敵な女性だと思わなかった。悠真の父です。すいません。ご迷惑ではなかったですか? 」

「いえいえ、紳士的に誘っていただきました。私は沢田莉子です」


(さすが莉子! 返しが上手い )


「わたしは吉野智夏です」


「悠真とはどこで? 」

「あの.. わたしいつも堤防で釣りをしてまして.... 」


「ああ、あの堤防ですね」

「はい。わたしの叔母の家が向かいのみかん畑でして.. 」


「もしかして望月さんの? 」

「はい.. あの? 」


「望月さんとは古くから知ってますよ。私の家もあの直ぐ近くですからね。私も父も望月さんの家に遊びに行った事もありますし。望月さんちの特製みかんジュースはおいしいんですよね! 」

「そうなんですっ! おいしいですよね! わたしも好きです 」


「そうかぁ。じゃ、今日はゆっくり楽しんでください。もし悠真がじゃまならこちらで預かりますんで。私はライフセービングの本部にいますので、何か困ったことあれば何でも言ってください」


「ありがとうございます。じゃ、悠真君行こう」

「あっち! あっちにパラソル用意したから」


悠馬君のエスコートでパラソルの下に避難。

ヒマワリ柄のレジャーシートが可愛い。



「まずはちょっと海に入ってクールダウンしよう」

「莉子ひとりで行ってきなよ」


「何言ってるの。こんな水着着てひとりで水浴びしてたら、よっぽど悲しい人でしょうが!ほらっ悠真君も行ったよ。智夏も早くいこっ! 」


海の水は程よい冷たさで気持ち良かった。

時々、大きな波が来ていたが、大概ゆったりと海を楽しめる。


「悠真君、あまりそっち行くと危ないよ」


「大丈夫だよ。  おわっ!...... 」

突然、悠真君が海の中に姿が消えた!!


「悠真君!! 」


バシャッ!!

「ばぁ~! なんちゃってー! 」


「もうっ!! 」

これだから子供は....


その時大きなうねりが来た。

海が悠真君とわたしを飲み込もうとする。


バーン!!


「キャッ(悠真君!! )」

すかさず悠真君を抱きしめる。




「 ....お、お姉ちゃん.... く、苦しい」


「おお~智夏、大胆だね~。なるほどそうやって男を惑わすのか。メモメモ! 」


「 ..変なこと言うな! ごめんね、悠馬君」

わたしは離すまいとした結果、悠真君の顔を思い切り胸に押し付けるような形になっていた。


「へへへ」


「(『へへへ』って何だ? 9歳は油断できないな.... )」





「しかし暑いね~.. 熱射光線がパラソルを通り抜け、きっと地球の裏側にいってるよ。もう一回、日焼け止めぬろうっと」

「あんたそれより上着着なさいよ!! 」


まったく莉子のマイペースには困る。



トイレに行っていた悠馬君が手に袋をもって帰ってきた。

「お姉ちゃん、これパパから『どうぞ』って」


「おお! カップアイス! しかも、これはレディーボーデン! 」


『 レディ~ボーデン♪ レディ~ボーデン♪ 』


「ははは。なに莉子歌ってるの? なにそれ? 」

「知らないでしょ? レディボーデンのCMだよ。うちの父様が子供の頃、こんなCMソングだったらしいよ。この前、口ずさんでいて覚えたんだ。さっ、ご一緒に! 」


「「「 レディ~ボーデン♪ レディ~ボーデン♪ 」」」


「あははは。まったく何歌わせるんだか。ほら、早く食べようよ。溶けちゃうよ」


「あれ? スプーンがないよ、これ」


「本当だ! 僕、急いで取ってくるね!! 」


莉子の思った通りになったのは少し悔しいが、夏にビーチで過ごすこの時間はやっぱりいいな。

なんだかんだでやっぱり莉子がいるからだ。


今日の『るるビーチ』本当に楽しいっ♪

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