第7話 先輩、襲来
先輩に相談に乗ってもらった帰り道、俺は考え事をしていた。
「雪菜の相手は女癖が悪いか。」
これは確定と言っていいだろう。正直に言うと悔しい。ずっと一緒だった幼なじみを取られたのだ。
「覚悟を決めないといけないな。」
あいつを問いただす覚悟を。あいつの両親に知らせた方がいいのか。迷ってばかりだ。こればっかりは問いただした後のあいつの反省具合によるだろう。
それから家に帰った俺は、疲れていたので、さっさと支度をして寝た。
次の日の朝、俺は絶望することになる。
雪菜から送られてきたあの写真。見ただけで、行為後なのが分かる。気づいたら俺は泣いていた。
「昨日、覚悟を決めたはずなのにな……。」
俺の何がダメだったのか。全く分からない。
とりあえず、先輩に伝えておくか……。
Hotaru:優斗君!早まっちゃダメよ?
とりあえず、家に行くから、大人しくしててね。
まただ。嬉しいはずなのに、何も感じない。
だが、感謝はしておかなくては。
Yuto:ありがとうございます。ですが、家に来てもらうのは悪いですよ。
雨宮先輩の家がどこなのかは知らないが、近くはないだろう。
Hotaru:大丈夫。そんなことより家で大人しくしててね?
優しいな、先輩は。
それから20分くらいして、先輩が来た。
「大丈夫?!優斗君!」
焦った様子でインターホンから話しかけてきた。
「はい、大丈夫ですよ。今玄関開けますね。」
俺は玄関の鍵を開けて、先輩を自分の部屋に案内した。部屋に異性が来たのは、あのアバズレ以外今までない。
「ご両親はお仕事?」
「はい。母は夕方に帰ってくると思います。」
うちは共働きなので、休みの日で二人が仕事の時は家では一人だ。
「なら、私は夕方まで居させてもらおうかしら。」
マジか……。今は朝の10時。これから夕方まで一緒とは。クラスの男子が見たら嫉妬で殺されそうだな。
「ありがとうございます。お昼ご飯はどうします?」
俺は料理はてんでダメだ。両親が仕事の日はずっとジャンクフードやレトルト食品だ。これらは人類最大の発明だと思っている。
「大丈夫。私が作るよ。私、一応料理できるよ?」
先輩の手料理とは……。美味しいに決まっているだろう。
「あ!この漫画、私も読んでるよ!」
先輩が俺の本棚を見ながら言った。その漫画はかなりマイナーな漫画だが、知る人ぞ知る面白い漫画だ。先輩も知ってるとは。
「しかもすごい!全部初版じゃん!」
「はい。作者の漫画が好きで、一巻から買ってたんですよ。」
先輩と漫画の話ができるなんてな。もしかしたら気を使ってくれているだけかもしれないが、それでも今は嬉しい。
「へぇ〜。私この漫画が三巻くらいの時に買い始めたから、一巻の初版ってすごいね。」
それから1時間くらい、先輩と漫画の話をした。あのアバズレとそんな話は出来なかったので、新鮮味があって、楽しかった。でも、そろそろ本題に入らないとな……。
「先輩、この写真を見てください。」
俺はそう言って、朝送られてきた写真を先輩に見せた。それを見た先輩は、優しく俺を抱きしめてくれた。
「大丈夫。大丈夫だよ。私は君の味方だから。」
俺は先輩の言葉を聞いて涙がまた出てきた。先輩の前では泣くまいと思っていたのだが、限界だ。
「ほんと、君は可愛いなぁ〜。」
先輩が小声で何か言った気がするが、今の俺には全然聞こえなかった。
それから五分くらい泣いて、先輩と話をした。
「ねぇ。優斗君、この写真、彼女のご両親に見せるの?」
どうしよう。見せてもいいのだが、彼女の両親にはお世話になっていた。彼女の両親まで巻き込んで良いものか。
「どうせなら、一生物の恥にしてやりたいので、あいつの両親には報告せずに、もっと多くの人に報告してやりましょう。」
後悔させてやろう。俺を裏切ったあいつを。
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