第一章(最終章かもしれません) 春の海岸
春の訪れには、まだまだ早い。
海岸の波しぶきを見つめながら、私は小さくタメ息をついた。
別に、どうということはない。
寂しいとか。
切ないとか。
そんな、小説になるような要素は一つもない。
ただ、少し、面倒だな・・・と。
実家のお母ちゃんからの手紙。
スマホのラインで済む内容なのに。
改まって届く、封書の手紙。
超、うざい。
ちゃんと、栄養のあるものを食べているか、とか。
仕事のストレス、無いかとか。
遠回しの文面の行間には。
「結婚はしないのか?」
これだけが、私に読み取れてしまう。
来月で二十九歳になる。
嬉しい誕生日が、憂鬱なカウントダウンなったのは、いつ頃だろうか?
別に、オールドミス(死語?)になることには、そう、違和感はない。
でも、親や親せきからのオブラートに包んだ腫れ物に触るようなコメントはNGだ。
フリーズするブルートゥスのキーボードよりもイラつく。
私が誰と恋しようが、誰と結婚しようが・・・。
そこまで書いて、私のブラインドタッチはストップした。
やはり、お母ちゃんには、花嫁姿、見せたいよね。
お父ちゃんにも。
だから。
うざいなんて、言わないで。
私なりに、記憶をたどってみる。
誰か、いたかなぁ・・・?
白々しい、自分への問いの前に。
私は鏡をのぞいた。
最近、コロナでマスクばかりの日常だから。
サボって、メイクは目元だけ。
アイラインとシャドーだけ気にすれば。
そこそこには、見えるよね?
【可愛いよ・・・】
アイツは、そう、言ってくれた。
嬉しかった。
素直に。
別に、かわい子ぶるわけじゃ、ないけど。
褒められれば、うれしいじゃん。
ファーストキスも、アイツにあげた。
手を繋いで、学校からの帰り道。
いつも、早く着きたいと思っていた家路が。
あっけなく過ぎて。
夕日がきれいだ、なんて。
アニメのワンシーンみたい。
私にも。
こんな幸せな時間があったことが。
凄く。
嬉しかった。
だから、だろうか。
アイツから、何年ぶりかのメール。
スルーしようかと。
思ったけれど。
開いた途端。
涙が出た。
只、単に。
アイツのハンドルネームを読んだだけなのに。
明日。
会う、約束した。
ハッピーエンドかは分からない。
むしろ、逆だろう。
単なる暇つぶし。
帰郷の時間を持て余して。
でも。
弱いんだなぁ・・・。
今でも。
アイツが好きだから。
第二章 は無いよ。
期待させて、ゴメンね。
でも、私。
明日、アイツに会いに行きます。
恋、したい。
ハグ、したいから。
バカな私。
笑って、いいよ。
じゃあ、みんな。
お休みなさい・・・。
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