怖い…

〈ユキナ視点〉









半ば強引に電話を終わらせ…

私のスマホの通話終了ボタンを

ポンっと押している青城君に恐る恐る目線を向けると







アスカ「夕飯は食べたの?」







さっきの笑顔はまだ崩れてなく

優しい笑みを浮かべている青城君にホッとして

福谷さんが買ってくれた

おにぎりとかを食べると答えると

「じゃー先にシャワーだね」と言って

キッチンの方へと歩いて行き

ガサゴソと棚を開けて何かを探し出した






( ・・・・・・ )






シャワーとキッチンが中々結びつかないでいると…

ゴミ袋用の透明なビニール袋を手に持って

近づいて来た青城君は「行こうか」と

私の右手を引いて小さな脱衣室へと歩いて行き…







「・・・へっ…あのッ!?」






アスカ「動いたら脱がせにくいよ」







洋服のボタンを外し出した青城君に驚いていると

「ジッとして」と言って

プツン…と、どんどんボタンを外していき

肌けだした胸元を隠そうと右手を持っていっても

完全にボタンの取れたシャツをグッと肩から脱がされ

下着と肌着変わりに着ていた

キャミソールだけとなった上半身に

恥ずかしさを感じていた…





ギブスのついている左腕から

ゆっくりとシャツを抜き取る青城君に

「一人で出来るから」と

脱衣室から出て行ってもらおうとしたけれど

「一人じゃ無理だよ」と

楽しそうに笑っている…







アスカ「お世話する人…俺しかいないんじゃない?」






さっきの…

溝口さんとの電話で

言った事を言っているんだろうけど…






( お風呂のお世話なんて…無理… )







「だっ…大丈夫だから…」







アスカ「片手でシャンプーはキツイでしょ

   それにあんまり無理すると

   ギブスも中々取れなくなるよ?笑」







「・・・・・・」






確かに…

診てもらったお医者さんからは

極力、振動を与えない様にと言われていた…






( ・・・でも… )






顔を下げたままでいると

青城君の手は私のスカートへと伸びてきて

サイドにあるフォックを外そうとしている







アスカ「心配しなくても

   そう言う事をする気はないよ」


 





「・・・・・・」







青城君の口の端は上がったままで…

機嫌良さそうにスカートのファスナーを下ろすと

「期待させちゃったのかな?」と

更に意地悪な笑顔を浮かべている…






「そう…いうわけじゃ…」






恥ずかしくて目線を床にある

自分の足へと向けたまま動かないでいると

パサっとスカートが床に落ち…







( ・・・・期待…なんかしていない… )






そう思っていても

ストッキングをゆっくりと下げ…

足を持ち上げて脱がせてくれている

青城君の頭を見下ろしながら

どんどん…変な気分になっていく…





膝をついたまま

私の下の下着へと手を伸ばし

少しずつ下へと下げられていく下着に

何もついていないでと願いながら

目をギュッと閉じていると

青城君の小さな笑い声が聞こえ…

その意味も分かっていた…






アスカ「寒い?笑」






キャミソールと…

上の下着も取り外され…





何も纏っていない状態の私に

そう問いかけてきた青城君は

本当に意地悪だと思う…





全然寒くないし…

むしろ恥ずかしさで身体中が熱かった…






「寒く…ない…」






アスカ「そう?笑」







ギブスの部分にゴミ袋を巻き付けて

濡れない様にしてくれた青城君に

感謝は感じても…

素直に「ありがとう」とは言えなかった…






アスカ「お湯は…ぬるめがいいよね?」






「・・・・・・」






さっきは「寒い?」なんて問いかけて来ておいて

私の身体の状態を分かっている彼は

給湯器の設定温度をピッピッピッと下げていっている






アスカ「髪…相変わらずサラサラだね」






「・・・・・・」







お湯をかける前に

髪を数回指で撫でていた彼が

ポツリと言った何気ない言葉だろうけど…



嬉しくて…頭を優しく洗ってくれている青城君に

小さく「ありがとう」と呟いた…





長く黒い髪が…

サダコみたいだと言われ…




風で舞い上がっても…

講義中に板書をしていて

髪が顔の横に垂れてきても…






【 今日もサダコヘア絶好調じゃん 】






見られるのが嫌だった…

だから目立たない様に…

髪を毎日結んでいた…







「痒い所はない?」と

まるで美容師の様に優しい手つきで

念入りに洗ってくれる青城君に…

少しだけ擽ったい気持ちになり

「大丈夫です…」と敬語で返事をかえすと

「そう」と笑った声が耳に届き…





4つ下の彼は

私を「先生」と呼ぶくせに

態度や口調は

全然…生徒なんかじゃないなと思った…







トリートメントまで終わり…

ここにあるボディソープの事を思い出した私は

「あとは…大丈夫だから」と言って

浴室から出て行ってもらおうとすると…







アスカ「あー…摩擦レスってやつだっけ?笑」






「・・・ポンプ式だし…自分で洗えるから…」






つい先週まで固形石鹸を

タオルで泡立てていたけれど…




ずっと使っていたタオルがボロボロになり…

捨てた事を忘れていた私は

並んだ会計で思い出し

たまたまレジ横に積まれていた

このボディソープを手に取ったんだった…






アスカ「髪も体も大して差はないよ」






大有りだよと言いたいけれど

口にだせないまま

ポンプを数回押している青城君に

変なドキドキ感を感じていて

背中に手を当てられた瞬間

「んっ…」と小さく声を漏らしていた






アスカ「体…人から洗ってもらうの気持ちいいよね?」






肩甲骨から徐々に下がっていく

指の感覚に頭がぼーッとしだし

少し指が動くたびに

ビクンッ…と小さく揺れる自分の身体に

嫌だと感じていると






アスカ「ココも…洗わなきゃね…」






背中を洗っていた掌が脇の下から

スッと前の方へと回ってきて

優しく胸元を触られ

「あッ…」と大きな声が漏れてしまった…






アスカ「先生…浴室ここは響くよ?笑」






自分の右手で口を覆い

漏れる声を必死に抑えていると

「ただ洗ってるだけだよ」と

ワザと耳に唇を当てて囁く彼は…

やっぱり全然年下なんかじゃなく…

生徒だったあの青城君の面影なんて全くない…






腕…お腹と…

青城君の掌は私の身体中へと周り…





シャワーを終えて

脱衣室で体を拭いてもらっている時には

身体も顔もすっかり熱ってしまっていて

熱中症かと思うほどに

鏡に映る自分の顔は赤く染まっていた






アスカ「冷たいお茶でも飲む?笑」






「・・・・・・」







( 青城君も怖いけれど… )






裸の状態で…

何もかも彼の言う通りに

身体を洗われたり

バスタオルで全身を拭かれたり…






アスカ「片足あげて」







彼氏でも…

家族でも…

介護士でもない彼に

下着を履かせてもらっている自分が

とても不思議で…怖かった…






アスカ「いい先輩だね……ハイ…」






着替えを終えて部屋に戻ると

福谷さんが買ってくれた

おにぎりのビニールを剥き…

「ハイ」と私の口元に差し出す青城君に

また…不思議な感覚へと落ちていく…






彼がどうしろと言っているのかが

なんとなく分かり

おにぎりに顔を近づけてパクッと一口齧ると

「ふっ…」と笑い…







アスカ「美味しい?」







「・・・・うん…」







自分の手で持って食べたいし…

ハッキリ言って食べにくい…




だけど…そうしない自分が…

不思議で…ただただ…怖かった…









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