『美の基準』
石燕の筆(影絵草子)
第1話
エリカは誰よりも美人だった。
しかしまだまだ自分は美人ではない。
そんな思い込みから周りの声も聞かず整形を重ねた。
整形はうまくいきおかげで誰もが認める美人になった。
しかし流行り廃りは早いもので美人の基準は平安時代まで遡りぽっちゃりとした不細工顔が美人だという認識になり彼女は次第にあろうことか不細工と呼ばれるようになる。
それに腹を立てた彼女は整形をし今度は時代に合わせた不細工な顔に変えた。
彼女は持て囃されたが、やがてしばらくして美人の価値基準は戻ってきれいな顔立ちの人間が好まれるようになった。
整形を重ねた結果これ以上整形をすれば顔が崩壊しかねないと医者に言われるが無理やりに整形をしてしまう。
整形後、鏡を見たエリカは満足そうな顔で病院を出る。
美人が持て囃される時代は過ぎて今や猿顔がトレンドだった。
車のミラーに映るエリカの顔はまさに猿そっくりの顔だったのである。
『私は美人』
そう独り言を言いつつ満足そうに笑った。
美に基準などない。
いつだって、基準は定まらない。
人により、時代により、基準は変化するからだ。
『美の基準』 石燕の筆(影絵草子) @masingan
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