『馬鹿と煙』

石燕の筆(影絵草子)

第1話

佐山は絶叫アトラクションが好き。


兎に角子供のときから高いところが好き。


遊園地に行ったら、ジェットコースターには必ず乗る。


対して彼の恋人の真美は絶叫アトラクションが嫌いだった。


無理やりジェットコースターに乗せた佐山はもうすぐで落ちるぞという落下地点まで来たときに気絶してしまう。


気絶している最中、妙な光景を見た。


ストレッチャーで運ばれる自分。

先には手術室と書かれた部屋。


周りを囲う医者とナース。

泣きじゃくる真美。


やがて気づくとマシンは地上に着き、みんなが降りてゆく。真美と一緒に降りると


「なあんだあなたも気絶することなんかあるのね」


そんなことを言う。もう一度乗ろうと言うと真美は待ってるという。


一人、順番を待ち再びジェットコースターに乗り、あの落下地点まで着たときに今度は急に何十メートルもあるビルの屋上から落下する光景を見た。

妙にリアルだ。すごい。


あまりの怖さにうわぁと叫び声をあげる。ハッと目を覚ますと白衣を着た人物が横にいて


「どうです?わが社の落下体験マシンは。

あらゆるシチュエーションでの落下をお楽しみ頂けます」


佐山はもう一度お願いしますと言っておこしたからだを横たえた。


白衣を着た人物はマシンのスイッチを入れて


「それでは今度は高層ビルの工事現場の足場から落下し、地上より250メートル上空から投げ出される場面からのスタートです」


『馬鹿と煙は高いところが好き』とはいい得て妙である。

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『馬鹿と煙』 石燕の筆(影絵草子) @masingan

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