奥の手

 突如ミックサック団が公演をしている舞台上で看板女優リーザを連れ去ろうと現れた魔族達、ギン達はリーザの救出を目指しつつ街の人々を守る為、魔族達との戦闘に臨んでいた。


 ギンが魔族の剣豪であるアルドと交戦をしている中、ジエイとウィルはコウモリに捕まっているリーザの救出を目指していた。


「ジエイ、あんなに上空にいたんじゃ、どうやって助けりゃいいんだ?」

「ウィル殿、私がブリックがいる建物まで飛びます。それでリーザ殿が落下しないように注意して様子を見てください」

「そんな作戦でいいのか?2人でブリックを倒してからリーザさんを助けた方がいいだろう」

「この作戦にブリックだけでなく、アルドもいるという事はピッキーもいるはず。敵は策を何重にも用意しているとみていいでしょう」


 ジエイの話を聞き、ウィルも納得し声を発する。


「分かった、落下もだがピッキーの邪魔が入らねえように見てるぜ」

「頼みましたぞ」


 そう言うとジエイはブリックのいる建物まで飛び上がり、ブリックと対峙する。


「ほう、私と戦うおつもりですか?たったお1人でこの私に勝てるとお思いで」

「我が術を駆使すればお前にもそう簡単には負けん、いくぞ!」


 そう言ってジエイは短剣を取り出し、目にも止まらぬ速さでブリックに接近し、斬りつけようとする。


「おっと、それでは私も少しは抵抗させてもらいましょう」


 次の瞬間ブリックは自身の爪を伸ばし、その爪でジエイの短剣を防ぐことに成功する。


 ブリックの懐に飛び込むことが難しいと感じたジエイは後退しようとするが、更に爪を伸ばしブリックの追撃がくる。


「ぬう!」


 爪自体をかわす事には成功したが、ブリックとは距離を取って戦う必要があると感じたジエイは術を放とうとするが、先にブリックより魔法が放たれる。


「くっ!」

「ふっふっふっ、魔力障壁の使えないあなたがいつまでこれをかわせますかね?」

「こうやってお前を引きつけておけば、リーザ殿をそう簡単には連れ去れまい、その間に我々の誰かがリーザ殿を救出できれば、何の憂いもなくお前達を倒すことができる」


 ジエイの言葉を受け、ブリックは突如笑い出す。


「ふっふっふっ、ハーーハッハハ!」

「何がおかしい!」

「いや失礼、奥の手というのは最後までとっておくものなのですよ」

「何⁉」


 更にジエイの背後から新たな魔物が現れる、現在リーザを連れ去っているコウモリと同種族の魔物がジエイに襲い掛かる。


「しまった!」

「では、私はあの人間の女性をお連れしなくてはいけないのでね」


 その言葉と共に、ブリックに段々とコウモリに連れ去られたリーザが接近していく。もはや止められないのか。

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