苦しむ新皇帝

 遂にカイスへの接近に成功したギン達であったが、カイスの参謀であるルドルフがフィファーナやエンビデス達と内通しギン達が帝国領内に侵入したという言いがかりをつけ、それを受け、エンビデス達にカイスは問うが、それを好機と捉えたエンビデスはカイスの説得の為に声をかける。


「もう1度言うぞ、カイス、お前は帝国内をまとめる。それに固執し大義を、いや自らの本心を見失っている」

「私の望みが偽りだというのか?ギガス陛下が遺したこのブロッス帝国を失わせてはならん!それはお前とて分かっているはずだ!」

「私も確かにそう考えていた、だが私がすべきはお前の敵を叩く事ではなくお前が真に望む事にを支える事であったと気付かされたのだ」

「私は帝国を失わせたくない、そんな事をしてしまえば亡き陛下に申し訳がたたん」


 ギガスに育ててもらった恩と忠義からカイスはエンビデスの言葉を一蹴するが今度はトーラスがカイスに言葉を放つ。


「カイス様、ギガス陛下は帝国1強にする事で魔族を鎮圧する事を考えておりました、カイス様もそのやり方をご継承なさるおつもりのですか?」

「当然だ、亡き陛下の理想は私が叶える!」

「しかし、その方法は失敗に終わりました。私はカイス様に同じ過ちを繰り返して欲しくないのです」

「だがプレツと休戦したことで帝国が割れたことも事実。陛下がご健在であればそのような事は起こり得なかった、それならばやはり帝国の勢力を拡大する事が……」


 カイスはあくまでもギガスの路線を継承する事が帝国の為であると主張しようとするが、その発言に更にギンが異を唱える。


「カイス!お前がギガスに育ててもらった恩と、彼の理想に共感したからこそ彼への忠義が捨てられないのは分かった!」

「ギン……」

「だが、結局ギガスと同じ方法をとれば行きつく先はギガスと同じだ!彼の最期を看取ったお前に彼の無念さが分からないのか?」

「だから私は陛下の叶えられなかった理想を叶える為にこうしておるのだ!」


 頑ななカイスにギンは自らがギガスの最期の瞬間に感じたことを話す。


「お前も聞いたはずだ、ギガスの言葉を、俺には自らの行いを悔いているように感じた。俺でさえそう感じるのにお前が分からないはずはない!」

「黙れ!誰にも陛下を否定させなどはせん、陛下が正しいことを私が証明しなければならんのだ」


 カイスがギンの発言を必死に否定しようとするがその時にプラナの声が聞こえる。


「それなら、どうしてそんなにお苦しそうなのですか?」

「プラナ……」


 再度カイスに呼びかけるプラナ、今度こそ思いは届くのか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る