揺らぐ副官

 かつて魔導騎士団に所属していたプラナはトーラスに対話を求め続けてはいたが、トーラスはあくまでも亡きギガスの理想を追求すべきであると主張し、プラナの言葉をはねのける。


 そんなトーラスに対し、プラナはギガスの死により生じたひずみについてトーラスに問う。


「確かに私もかつてはギガス陛下の理想を信じておりました。ですがギガス陛下がお亡くなりになり、その結果どうなりましたか?」

「何⁉」

「帝国は分裂し、その結果更なる争いが勃発しました。こんな事を繰り返してはいつまでも戦いは終わりません!」

「だから、カイス様は新たな皇帝となり、帝国をまとめようと……」


 トーラスも反論しようとするが、少しづつ言葉が弱くなっていき、今までの発言に対する自身も失いかけていた。


 そこにギンが畳みかけるように言葉を放つ。


「だがトーラス、今のままでは結局カイスはギガスの二の徹を踏むことになる!」

「何だと⁉」

「いや、それどころか政治経験の浅いカイスに代わってルドルフという男が主導しているやり方は結局ただの領土拡大でしかない」

「……」


 ギンの発言に対し、トーラスはもはや言葉がなく更にギンの発言を聞く。


「ギガスが死んだ後も一時的とはいえ、カイスやお前達は俺達との休戦を継続した。それはお前達もこれ以上人間同士で争う事が無意味だと気付いたからじゃないのか?」

「……それは私とて分かっている。だがカイス様に逆らう事は私には……」


 トーラスもかつての帝国から変わる事を望んではいたが、カイスが皇帝に即位し、ルドルフが実質的に領土拡大の為に戦線を拡大しようとしている事には納得できないでいたが、皇帝のカイスの決定には逆らえないと自身の思いを吐露するが、それに対しプラナが自身の考えを述べる。


「それは違いますトーラス殿」

「プラナ……」

「カイス様が暴走しそうになって止められる役割を持っているのはトーラス殿あなたです。だってトーラス殿はカイス様の副官なのですから」

「副官……だがそれは、カイス様が魔導騎士団長であったから……」


 あくまでもトーラスはカイスが魔導騎士団長であったからこそ自身の副官としての役割は機能していたと思っていたがプラナはまた別の考えを示す。


「いえ、カイス様とトーラス殿が単なる上官と部下ではなくしっかりとした信頼関係がありました。だからトーラス殿、カイス様を止める事をお手伝いください」

「……私は……」


 トーラスの決断とは?

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