出発の時
スップにあるミッツ教団の教会で一夜を明かしたギン達は朝食を終えるとニリへの出発の準備をしていた。
馬車の前に移動してギンとルルーが話をしている。
「とりあえず荷物はこれくらいでいいか」
「そうね、どうせ途中で街にも立ち寄るし、出港直前にニリで調達できる物はそこでしたほうがいいわ」
「そうだな、よし、みんな馬車に乗ってくれ」
ギンに促されると一同が馬車に乗り込んでいく。
ループが引く馬車をギンが御し、エイム、ルルー、ムルカ、プラナが乗り、ゲンジが引く馬車をウィルが御し、ブライアン、ジエイ、ヨナ、ミニル、そして傭兵達が乗り、出発した。
ループが引いている馬車の中でエイムがプラナに話しかけている。
「あのプラナさん、帝国に行くのだって本当はとても辛いはずなのにしっかりと決心してすごいと思います」
「私はカイス様が私の想像を超える位苦しい立場にいて何もせずにいられなかっただけです。正直私に何ができるかと分からなかった。でもヨナさんが言ってくれたんです」
「ヨナさんが?」
「ええ、気休めかも知れないけど、トーラス殿やエンビデス宰相を説得できて更に私もカイス様に言葉を届ければ効果があるかもしれないと。それで私もいく意味があるかもしれないと思いました」
プラナの発言を聞いてルルーが言葉を挟む。
「ヨナもそうやってあなたを気遣えるようになったのね、グラッスに帰る場所ができたのはあの子にもいい影響を与えたかもしれないわ」
「はい、グラッス王にもヨナさんの思いが届けばいいんですが」
「そうね、ねえ、カイスがもしまた休戦に応じたらあなたはどうするつもりなの?」
「え?どうするとは?」
ルルーの問いかけにプラナは戸惑うがルルーは言葉を続ける。
「帝国でカイスと過ごせるように希望するか、それともやっぱりお兄さんであるギンと過ごすか、どっちかを考えているのかな?」
「カイス様は形式上とはいえ、1度は私を死んだ事にしました。だからもう私はいないものと思っているかもしれません」
プラナの話を聞いたその場にいる者達はみな、カイスもプラナを思っている事を知っており、休戦直後はカイス自身が自ら伝えることを意思として示していたが、現状またしても敵対関係となった為、自分達が伝えていいかも迷っていた。
それだけではなく帝国の皇帝として生きる事を決心したカイスがプラナへの思いを断ち切っているかもしれない、その恐れもあると誰もが思うがとても言い出せないでいた。
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