難航する同盟

 ヨナ達がグラッス内の混乱を鎮め終え、プレツに再度の帰還を試みている頃、ギン達はプレツの都市であるスップにあるミッツ教団の教会に留まっていた。


 教会内の食堂でギン、エイム、ブライアンが食事を摂りながら何やら話をしている。


「あれからグラッスの情報は何も入ってこねえけど、どうなってんだかな」

「ヨナさんや、ジエイさん達が無事だといいんですけど」


 エイムとブライアンのやり取りを聞いてギンも言葉を発する。


「俺達はヨナ達を信じるしかない、とは言え帝国の内乱にも介入できず、魔族の情報が得られないのは少し苦しいな」

「ルルーやムルカの旦那は元々グラッス側に顔を知られてるからともかく、俺達は魔族に備えてここに残ってるのにこれじゃあ何の意味もねえな」

「魔物自体は時々動き回っているようですが……」


 ギン達3人が話している時に何者かが声をかけてきた。


「あ、みんなここにいたのね」

「ルルーさん⁉」


 ギン達に声をかけたのはルルーであり、ブライアンがルルーに尋ねる。


「俺達になんか用なのか?」

「久しぶりにみんなと一緒に食事しようと思ってね、部屋で調べものをしながら食べてても味気ないもの」

「案外、寂しがり屋なんだなお前」

「うるさいわね、あなたにそう言われる筋合いはないわ」


 ブライアンとルルーの軽妙なやり取りを聞いてからギンがルルーに尋ねる。


「それで、魔族の根城について何か分かったのか?」

「全然だめよ、まだしばらく時間がかかりそうね、休戦協定が切れる前にどうにかしたいんだけど」

「帝国との正式な同盟の話は?」

「難航しているようよ、下手にプレツと同盟を結ぶと更なる離反者がでかねないからカイスも慎重に考えているみたい」


 帝国との同盟が難航している話を聞いてエイムが言葉を発する。


「プレツと帝国が正式に同盟できればプラナさんもまたカイスさんに会う事ができるかもしれないんですけど」

「そうね、でも帝国の混乱を鎮める事を優先するとしたらプレツとの同盟は後回しになってしまうわ」

「……ギガスの存在の大きさが逆に今のカイスには重みになっているな」


 ブロッス帝国皇帝ギガスのカリスマ、求心力は帝国を支える大きな原動力となっていた。


 だが、それが失われた今、帝国は少しづつではあるが凋落の道を辿ろうとしている。


 それを食い止めるべく奮闘するカイス。帝国の未来はどこに向かうのか?

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