恩返しと大切な友達

 グラッス国王マルスより魔族討伐の任を与えられたヨナは今後も仲間と共に戦っていくことを決意する。


 そんなヨナにウィルが声をかける。


「なあ、ヨナ、本当にいいのか?せっかく家族と過ごせるのにまた離れ離れになるんだぞ」

「王様の命令だからね、従うしかないよ」

「でも、それは……」


 ウィルはあくまでも自分達との信頼が強く、マルスがヨナを気遣った面もあるとふんでいた。だが同時にヨナにとってはまた家族と離れなくてはいけなく寂しさもあるものだと話そうとしたが、ヨナがウィルの言葉を遮り自らの思いを話す。


「ウィル、今回の件はあんた達が助けてくれたからできたようなもんだよ。それなのにあんた達が魔族と戦うのに、あたしだけここにいるのは良くないと思うんだよ」

「別に俺達に遠慮することはねえだろ」

「それだけじゃないよ。師匠には結局なんの恩返しもできなかった。だから師匠が守ろうとしたギンを助けるのがせめてもの恩返しだよ」


 ヨナはウィル達の協力への感謝の気持ちと、師であるジーナの思いを少しでも叶えたいという思いを吐露した。ヨナの言葉を聞いてミニルがヨナに声をかける。


「あなたの意志は固そうね、でもお父さんや弟さんに出発前の挨拶くらいしてきたら」

「そうだね、じゃあちょっと待ってて」


 そう言って、ヨナは父親のダリルとフランツ、そして侍女のニーの元に赴き、言葉を発する。


「じゃあ、みんな行ってくるよ、これから屋敷にいる傭兵達と馬車を拾うから、そこで他の兵達には挨拶するよ」


 ヨナがそう言うと、弟であるフランツが声をかける。


「姉上、どうしても行かれるのですか?」

「フランツ、あのさお姉ちゃんを助けてくれた人達がいるから、今度はお姉ちゃんが助けてあげないといけないんだよ」


 ヨナの言葉の後に少し間ができて、ヨナはある物を取り出した。


「これをフランツにあげるよ、ペンダントは壊れたけど、中の石は無事だったし」

「これは?」

「あのね、お姉ちゃんにとって、とても大切なお友達がくれたんだよ。フランツが石を大事に持っていたらお姉ちゃんは絶対帰って来るから」

「はい、大事にします」


 更にヨナはダリルとニーに声をかける。


「じゃあ、父さん、ニーあとはよろしくね」

「うむ、もうわしは何もできんが無事を祈っておる」

「ヨナ様、手料理を用意してお待ちしています」

「ありがと、じゃあ行ってくるね」


 ヨナが出発しようとした時にフィファーナの元に部下が報告に来ていた。


「フィファーナ様!」

「おお、そちは確か本国の様子を見に戻っていたはず、どうしたのじゃ?」

「はい、実は……」


 部下がフィファーナに耳打ちをすると、フィファーナは驚きを見せる。


「何じゃと⁉まさか……ジエイ!」

「どうしました?」

「そち達はプレツに戻るのじゃな?」

「はい、そうですが」


 次の瞬間フィファーナは険しい表情でジエイに伝える。


「わらわもプレツに参る。魔法剣を使う剣士達にも伝えねばならんことがある」


 突然のフィファーナのプレツまでの同行宣言!何が帝国で起きているのか⁉

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