立ち上がる国王

 ルルーより渡されたペンダントにより窮地を脱したヨナ。そのヨナに対しガンシルが言葉を放つ。


「ふん、悪運の強い娘が多少命を長らえたに過ぎん、こちらにはまだ人質がおるのだぞ。お前達誰でも良いからみせしめに殺せ!」


 ガンシルは兵に人質であるヨナの家族を殺すよう命じるが兵達はダリル達を拘束していた縄をほどき3人を開放する。


 その状況に理解が追い付かないガンシルは兵達に激昂する。


「お前達、何をしているのだ?何故人質を自由の身にするのだ⁉」

「ガンシル様、先程の陛下のお言葉をお聞きにならなかったのですか?」

「何だと⁉」

「陛下はダリル卿の息女やフィファーナ将軍との話し合いの場を持ちたいとおっしゃいました。しかしガンシル様はその意に反する行為をしました。これはグラッスや陛下に対する反逆行為に他なりません」


 兵の命令拒否に対し更にガンシルは激昂し、兵士達に言葉を放つ。


「貴様ら!このわしに逆らうというのか!誰が貴様らを近衛兵に推薦したと思っておるのだ!」

「我らが主君はグラッス国王マルス様だ!陛下を騙し、魔物と手を組むお前はもはや討つ他あるまい!」


 兵の言葉を聞き、マルスは兵に問いかける。


「お前達、それで良いのか?」

「良いも悪いも陛下をお守りするのが我らの役目、陛下に害をなすガンシル様、いえ、ガンシルは討たねばなりませぬ」

「……ガンシルよ、もはやお前の行動は看過できん。私は国王としてお前を討たねばならん」


 マルスの言葉を聞き、ガンシルは反論する。


「ですが陛下、先代亡き後陛下をお支えになったのはこの私なのです。私を討てば陛下はどう政を成していくのですか?」

「国を窮地に追いやってよくもそのような事を……、私も自ら立ち上がらねばならぬ時が来たのだ、あの娘がそれを示してくれた」


 マルスはヨナをさしてその言葉を言い放ち、ヨナが反応をする。


「あたしが?」

「そうだ、そなたは危険を顧みず、この国の間違った方向を正そうとしてくれた。私は未熟を言い訳に全てをガンシルに委ねていた、それにそなたが気付かしてくれたのだ」

「あたしが王様を……」


 マルスの言葉を聞き、ダリルもヨナに対し声をかける。


「そうだ、お前の行動が陛下を勇気づけたのだ。わしにはできなかったことがお前にはできたのだ」

「でも、それはジエイやウィル達が手伝ってくれたから……」


 ヨナが謙遜しているとジエイが言葉をかける。


「ヨナ殿の強い意志がなければ我らは何もできませんでした、これはヨナ殿が成した事なのです」


 国王の心にも火を点けたヨナ、このままグラッスは取り戻せるのか?

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