陽動作戦

ジエイがグラッスの王宮に兵士達に気付かれぬように潜入すると、ヨナ達はジエイが騒ぎを起こすのを街中で待っていた。


 そしてそれは程なく起きた。


「ん?城より火の手があがっている!一体どうしたんだ!」


 城下町に常駐している兵士がそう言葉を発すると更に別の兵士が呼びかける。


「待て!これはもしかしたら賊の陽動かもしれん」

「ならどうする?」

「とりあえず様子を見に行く組と街で賊の襲撃を警戒する組に分かれるぞ」

「そうだな」


 そう言って城下町の兵は城内の様子を見に行く兵と城下町で襲撃に備える兵に分かれて行動することとなった。


 その様子を見てウィルは言葉を発する。


「まずいなこれじゃあ隙を突くのが難しいぞ、かくなるうえは……」


 ウィルはもはや強行突破もやむなしと判断するが、そこで同行している傭兵が言葉を発する。


「待ってくだせえ、兵士達は俺達が引き受けやすぜ」

「あんた達だけで!危ないよ!」

「きっと、ジエイの旦那はこういうことを見越して俺達を同行さしたんですぜ」

「でもさあ、まだ街にもそれなりの数がいるよ」


 ヨナは傭兵達の身を案じるが傭兵達は強くヨナに対し意思を示す。


「姉御、姉御が王様を騙している側近を捕まえねえと俺達はただの罪人になっちまいやす!こいつらに構っていたら逃げられるかもしれねえ」

「あんたら……、分かった。無理だけはしないでよ、やばくなったら逃げなよ」

「俺達は帝国の兵隊にも負けねえくらい強いから大丈夫ですぜ、ウィルの旦那、ミニルの姐さん、姉御を頼みますぜ」


 傭兵の言葉にウィルは力強く、ミニルは少し戸惑いながら応える。


「おう!任せろ」

「え、あ、ああ、うん」

「何だよミニル、歯切れが悪いな」

「だって、姐さんなんて呼ばれ方、どうもしっくりこなくて」


 ミニルの言葉にウィルが返答をする。


「リンド達にはお嬢って呼ばれてんのにか?」

「リンド達は父さんの部下だからまだいいんだけど、この人達を仕切る自身は私にはないわよ」

「いつまで無駄口叩いてんの、早く行くよ!」


 ヨナの声掛けにウィルとミニルは応じる。


「そうだな、悪い」

「ごめん、すぐに行こう」


 ようやくヨナに連れられ、ウィルとミニルは王宮を目指し動き出す。そして傭兵が兵士達の前に出て呼びかける。


「陽動に気付いたなら仕方ねえ、お前達をぶっ飛ばして城に入らしてもらうぜ」

「貴様らか、そう簡単にいくと思うなよ」


 いよいよ王宮への突入が実行される果たして、ヨナは側近を捕らえることができるのか?

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