プレツに届きし文

 侍女のニーが屋敷から離れて少しすると、いよいよヨナ達も出発の準備を完了し、ヨナは屋敷の防衛の為の兵に呼びかけていた。


「それじゃああたし達はこれから王宮に向かうからここの防衛を頼んだよ!」

「はっ!」

「任せて下せえ姉御!」


 兵達と傭兵達の言葉を聞いてヨナはジエイに出発前の確認をした。


「馬車も置いていくんだね?」

「ええ、馬車では目立ちますし、徒歩で行くほかないでしょう」

「そうだね」


 そう言って、いよいよヨナ達はグラッスの王宮へと向かおうとしていた。


 ヨナ達が王宮に向かおうとしている頃、プレツにいるギン達にもヨナ達の情報が届いていた。


「みんな、聞いてとりあえずヨナ達がグラッスへの入国に成功したみたいよ」

「良かったです、それからどうなったんですか?」

「今こちらに届いている情報はそこまでだから現在がどうなっているかは分かんないわ」

「そうですか……」


 エイムとルルーのやり取りを聞いてブライアンが言葉を発する。


「しかしよく今のグラッスに入国できたな、同盟国とはいえ、帝国と休戦しているスールからの入国は簡単にはできねえはずだが」

「ジエイの文によるとどうやら闇商人に成りすまして武器と食料を届ける名目で入国したらしいの」

「さすがだなジエイは」


 ブライアンがジエイの潜入能力に感心しているとギンからも言葉が発せられる。


「問題はどうやってグラッスの暴挙を止めるかだ、それに帝国の動きも……」

「あれからリーズ遠征部隊の壊滅以外の情報も入って来たからそれも話すわね」

「ああ、頼む」

「うん、地方領主同士で小競り合いが頻発してるらしいし、帝国からの独立を宣言する属国もでてきたわ」


 ルルーの説明を聞いて、ギンは疑問をぶつける。


「カイスはそれらに対してどういう対応をしている?」

「部隊を指揮して鎮圧したり、領主同士の争いは仲介しながら止めているわ。と言ってもカイスが動かせる人材や兵はそんなに多くないから同時に対応できないの」

「そういえば、フィファーナ将軍は?彼女が戻っていれば少しはカイスの負担も軽減するはずだが」

「今は分かんないけど、この情報の頃はまだ帰還していないみたいなの」


 ルルーの言葉を聞いてギンはある事を思い出し、それを話す。


「そういえば、俺達が帝国に乗り込んだ時もフィファーナは帝国にいなかったな、まだ何かしらの作戦行動をしているのか?」

「でも、遠征部隊は帰還命令を受けているはずよ。リーズから撤退に失敗して壊滅した部隊はあるけど」

「じゃあ、フィファーナも撤退に失敗したかもしんねえな」

「あのフィファーナ将軍が?」


 ブライアンの言葉を聞いてギンは自らの考えを発する。


「もしかしたらスールの時みたいに何かを探っているかもしれないな」

「それって魔族の事ですか?」

「分からない、だが……、フィファーナに与えられた任務は帝国にとっても重要なはずだ」


 ギンが感じたフィファーナが未だ帝国に帰還してない程の任務。それは何を意味するのか?

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