希望を胸に
ゲンジが引く馬車の準備が終え、ヨナは傭兵団の面々、そして、ジエイ、ウィル、ミニルと共に馬車に乗り込もうとしていた。
ギン達が見送りをしている中、ヨナがギン達に呼びかけていた。
「じゃあ、みんなあたし行くよ。みんなは魔族に注意してね」
ヨナがそう言うとエイムがヨナに対し声をかけている。
「あのヨナさん、もし上手くいったらまたここに戻って来てくれますか?」
「エイム……」
「ヨナさんがトッポックス領主の娘として介入するならヨナさんはグラッスにもしかしたら、その……」
「エイム、側近達が父さんをはめたなら、あたしは父さんと弟に土地を取り戻してあげたい」
次の瞬間、ヨナは笑顔のような少し悲しげな表情も交えながらエイムに話す。
「そうすると、あたしにはグラッスに居場所はないから戻って来るよ」
「ヨナさん……」
ヨナが例え、今回の作戦を成功させても祖国へ戻れないことを語られるとエイムもさすがに喜べないでいた。
「そんな顔しないでよエイム、作戦さえ上手くいけば戻って来るからさ」
あくまでも気丈に振舞うヨナに対し、エイムはもはやかける言葉がなかった。
そんな時、ブライアンがジエイに尋ねていた。
「なあジエイ、確かトッポックス領主は俺達が前にグラッスに行った時は拘束されたけど、そこからどうなったかは分からないのか?」
「それが、スールの諜報員でも正確な情報はつかめてなさそうです。ただ……」
「ただ……何だ?」
「普通は領主程の立場の者が反逆行為をしたとなると何かしらの処分が公表されてもおかしくはないのですが、拘束されて以降、何も公表されてないのです」
その話を聞いてギンはある考えに至る。
「つまり、まだ領主やその親族は生きている可能性があるという事か?」
「あくまで可能性ですが」
ギンとジエイのやり取りを聞いてヨナは2人に呼びかける。
「だったら、それも確かめないと早く行こうよ!」
ヨナがそう言うとルルーがある物をヨナに手渡す。
「待って、ヨナ、これを持っていって」
「これは?」
「ミッツ教団のペンダントよ、あなたのお守りにして」
「いいの?」
ペンダントをヨナに渡すとルルーは自分の思いをヨナに話す。
「あの時、私はあなた達が過ちを犯さずすむような道を一緒に探すと言ったけど、こういう形とはいえ、あなたはしっかりと自分の道をみつけたわ。私達が何もしなくても」
「ううん、みんながいたからあたしはこうやって本当に何が大事か気付いたんだ。みんながあたしをこうやって助けようとしてくれるのには感謝してもしきれないよ」
「私は祈る事しかできないけど、気をつけてね」
「うん、ありがとう」
仲間の思いを受け、ヨナは自らの祖国が間違った道に進まぬよう向かう。
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