正しい思い

プレツやスールが表立って介入していない偽装方法としてジエイは自分達をヨナに雇われた私兵としてグラッスの戦争行為を止めるという案を提案し、ギン達もジエイの案に賛同する中、ジエイはヨナにこの方法について尋ねている。


「どうでしょう、ヨナ殿これならプレツやスールの介入は表に出ず、かつ我々もヨナ殿に協力できますが」

「……、でもこれはあたしの祖国の問題だよ、いくらプレツとかが表立って協力していないからって……」


 今一つジエイの案に乗れないヨナに対してギンが声をかける。


「そうとも言い切れない、いくら帝国が混乱中とはいえ、グラッスが正面からぶつかるのは無謀だとは思わないか?」

「確かにそうだけど、それってまさか……」

「十中八九、帝国側の領主にグラッスに通じている奴がいる。今のカイスの体制に反発する者だ」

「つまりグラッスが帝国になだれ込めばそいつらが乗じるって事だよね」


 ギンもヨナもグラッスに帝国の領主が内通している可能性を考慮しており、それで帝国が一気に不利になる可能性があると読んでいる。


「そうなってしまえば、カイス達といえど、勝利は難しくなるうえ、更に乗じて裏切る奴が出てくるかもしれない。今帝国が崩壊してしまえば、余計な戦火が各地で勃発して魔族どころではなくなる」

「グラッスと帝国の問題じゃすまなくなってしまう……」


 更にジエイがヨナに対して言葉をかける。


「だからこそ、今グラッスを止める必要があるのです、そして今それができるのがトッポックス領主の娘であるヨナ殿の名と我らです」

「あたしとあんた達が……」

「あなたが旗頭となれば我々だけでなく、国内の者で協力する者がでてくるかもしれません」

「トッポックスに父さんや弟を戻すことができるの?」


 ヨナの問いに突如ルルーが答える。


「やってあげて!」

「ルルー……」

「さっきまで反対していた私がこんなこと言う資格はないかもしれないけど。これはあなたにしかできない事よ」

「ルルー、どうして?」


 ヨナの問いかけにルルーは自らの心の変化を話す。


「どんなに強い力を持っても、思いを間違えるとそれはただ誰かを傷つけるだけ。でもあなたは正しい思いを持っているわ」

「あたしが正しい思いを……」

「祖国が間違った方向に、それも国王でなく自らの欲に溺れた側近達が主導しているのを止めたい気持ちが間違っているはずはないわ」


 ヨナがルルーの話を黙って聞いていると更にルルーは呼びかける。


「あなたも戦う力は持っている。でも今回は力の部分は傭兵団の人やジエイ達に任せて、自分の思いを多くの人に訴えて」

「ルルー……分かった!ジエイ、あんたの提案に乗るよ」


 ジエイの案を受け入れたヨナ、遂にグラッスへ向かう時が来た!

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