思いやりと主張

 グラッスと帝国の戦いを止める為、グラッスへ向かおうとするヨナであったが、ルルーに制止されると、自ら契約を破棄することを言い放ち、その言葉が信じられなかったルルーは思わずヨナに尋ね直す。


「今、……何て言ったの?」

「契約を破棄するって言ったんだ、これなら文句はないだろう」

「待って!」

「違約金が必要なら、ここに行商用の品物を置いていくからそれを売って金に換えてもらって」


 あくまでも破棄すること前提で話を進めるヨナに対し、ルルーも自らの思いを訴える。


「そういう事じゃないの、あなた達だけでグラッスに行くのは無謀よ!」

「……、でもプレツじゃ、この争いに介入できないんでしょ?そんな事をしたらプレツも他国の侵攻対象になっちゃうじゃん」

「だから、秘密裏の使者で交渉して時間を稼げば……」

「もうグラッスは完全にやる気だし、このタイミングで侵攻準備をしているって事は帝国の使者も突っぱねたはずだよ」


 ヨナはもはやグラッスを説得するのは実質不可能に近いことを悟っており、早めの武力介入の方が早いと考えている。


「ヨナ、あなたが祖国の暴挙を止めたい気持ちは分かるわ。でも、何か他にも方法はあるはずよ、私達も一緒に考えるから」

「ルルー、やめてよ。あんた達は大きな使命を背負っている。だからあたしのわがままに巻き込みたくないんだよ!」

「ヨナ……」


 ルルーもヨナも涙を流しながら互いを思いながらも主張をぶつけるが、そんなヨナに対し、ギンが言葉を発する。


「ヨナ、お前が祖国の暴挙を止めたい気持ちも、俺達を巻き込みたくないのも分かった。だからこそ俺達はお前を見捨てるわけにはいかない」

「ギン、あんた……」

「あの時、お前は俺にいざとなったらプラナを斬る覚悟はあるかと聞いた、それは俺の覚悟を見たから俺に協力する気になったと言ったな」

「何でいまさらその話をするのさ?」


 ヨナの疑問に対し、ギンはその時の思いを話す。


「結果、俺はプラナを斬ることができなかったが、それでもお前は俺を見限らずプラナの事も受け入れた」

「あれは、あんたは命をかけて、何としてもプラナを取り戻す覚悟を見せたじゃないか、そんな行動に心を打たれたプラナを受け入れない選択肢なんてないよ」

「多分、お前はあの時の俺の気持ちと一緒だ。だからこそやはり俺達はお前を見捨てるわけにはいかない、どんな形でもいい、俺達にもお前を手伝わせろ」

「でも、どうすれば……」


 ルルーの訴え、ギンの言葉に心が揺れるヨナにジエイが声をかける。


「ヨナ殿、ようはプレツやスールの介入が表に出ず、我らが協力する分には問題ないのでは?」

「理屈はそうだけど、でもどうやって?」

「策はあります」


 ジエイの秘策とは? 

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