怒りと真実

 スール国王よりジエイの元に届いた文にはグラッスがブロッス帝国への侵攻を企てている事が書かれていた。


 スールがグラッスを調査していたことに疑問が生まれたヨナはその理由をジエイに尋ね、ジエイより側近の国王に対する態度を不思議に感じたと告げるが、更なる疑問をヨナがジエイに尋ねる。


「どういうこと?それってルルー達と同盟交渉している時の話だよね?何でそこで側近の王様への態度が変って話になるの?」


 度重なるヨナの疑問にジエイに代わってルルーが答える。


「そこは私が話すわ。今のジエイの話を聞いて思い当たる部分があるから」

「何?一体何があるの?」


 ヨナに促されて、ルルーは少し声を震わせながら話す。


「落ち着いて聞いて、……実はグラッス国王にあなた達を雇う申し出を1度は断られたの……」

「それで?」

「その後、側近が耳打ちして突如考えを変えたの。国王はともかく、側近はま、まるであなたを、あなた達を厄介者みたいに扱っているようで……」

「ルルー……」


 ルルーは今になり当時の側近に対する不快感を思い出し、怒りの感情がこみあがりそうになったが必死で抑えていた。その様子にヨナが声をかける。


「無理しなくていいよ、ルルー。あたしなんかの為にあんたが怒る必要はないよ」

「ヨナ、でも……」

「言っただろ、あたし達は元々バカにされたり、さげすまれるのはなれっこだし」

「違うの!そうじゃないの!」


 思わず声をあげるルルーであったが、ブライアンがそんな中ヨナに声をかける。


「あのなあ、ヨナ、ルルーはあの時の変ろうとしているお前を知って、今のお前を知っているんだ。だから余計にその側近がむかつくんだぜ」

「元々悪いのはあたし達なんだし、あんただって怒ってたんじゃ」

「確かにそうだ、でもお前あの時のルルーの言葉を忘れたのか?」

「言葉?」


 ヨナに対し、ブライアンはルルーが言った言葉をヨナに言い放つ。


「お前達が2度と過ちを犯さないような生き方を一緒に探すって言った事だ。そしてその言葉に嘘がないから怒るんだぜ」


 ブライアンの言葉にヨナは黙り、更にブライアンが言葉を続ける。


「だから、ルルーの気持ちを分かってやれよ。こいつは口うるさいが、みんなの事をちゃんと考えているんだぜ」

「口うるさいは余計よ。ヨナ、私はただあなたを厄介者扱いされるのが嫌な気分だった、今のあなたがちゃんと変わったからこそ、余計にその感情が強まったの」

「ありがとう、ルルー。ねえ、グラッスと帝国の戦争を止める方法はないかな?」


 ヨナは礼の言葉を述べると、すぐにグラッスと帝国の戦争を止める方法をルルーに尋ねる。


「スールもそうだけど、プレツも介入は難しいわね、もう1度帝国から停戦要請をする他ないわね」

「それじゃあ無理だよ!あたしが王様を説得して戦争を止めてもらう!」

「待って!どうやって説得するの⁉そもそも傭兵のあなたがどうやって国王に謁見するつもりなの?」

「……今まで隠していた、と言うより、もうあたしにとっては無意味なことだと思っていたけど、あたしはトッポックス領主の娘だよ……」


 突如、自らの出自を明かすヨナ、その真意とは?

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