孤児院をあとにして

 プラナとの話を終え、再びスップの教会に戻る前に、孤児院内に残っているエイムとミッツ教徒に声をかけるべく、子供達も集まっている大広間へとギンは向かっていた。


 大広間に着くと、子供達に本の読み聞かせをしているエイムを発見し、声をかける。


「エイム」

「あ、ギンさん、プラナさんとのお話はもういいんですか?」

「ああ、とりあえず今日の所は戻ろう」

「そうですか、分かりました。みんな、また今度来た時に別の魔法のお話をしますから、これで失礼します」


 エイムの声を受けて子供達から声があがる。


「約束だよ、また来てね」

「今度は外でなんかすごい魔法を見せてくれよな」

「僕には文字を教えて」

「じゃあ、あたしには魔法を教えて」


 子供達の要望の多さにエイムは笑顔で返し、ギンは驚いていた。


「すごいなエイムは、あれ程子供達に好かれるなんて」


 ギンが声を発すると、マザーがギンに声をかける。


「それはあの方の子供達への接し方がとても丁寧ですし、それだけではなくさっき子供同士のケンカをビシッと注意する力強さもあるから、あの方に惹きつけられるんでしょう」

「ええ、彼女や仲間が俺と妹を繋いでくれたんです。彼女がいなければ今日のような日は来なかったかもしれない」

「フフフ、そうですか」


 ギンとマザーがやり取りをしていると子供達の相手を終えたエイムがギンの元に駆け寄る。


「お待たせしました」

「それじゃあ行こうか」


 ギン達の声が聞こえ、ミッツ教徒もギン達に近づき、声をかける。


「お帰りになるのですね、それでは参りましょう」

「分かった」

「お願いします」


 ギン達が孤児院を出ようとするとプラナがマザーに懇願していた。


「あの、入り口まで見送りだけでもさせてください」

「もちろんいいですよ」

「ありがとうございます」


 そう言うとプラナもギン達に近づき、声をかける。


「兄さん、エイムさん、入り口まで見送るわ」

「プラナ……」

「よろしくお願いします」

「はい」


 そう言ってプラナも入り口までギン達と歩き、入り口に着いて、ギン達が馬車に乗りこもうとする時にギンに声をかける。


「じゃあ、兄さんまた来てね。いつかちゃんと兄さんと過ごせる日を待っているわ」

「プラナお前は……」

「ん?何?」

「いや、何でもない。またな」


 ギンが挨拶を終えるとエイムもプラナに挨拶する。


「それじゃあプラナさん、また来ますね」

「エイムさん、どうか兄をよろしくお願いします」

「はい」


 そう言って馬車は出発し、孤児院を離れていく。次なる再会の日を願って。

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