私という人間

ギンより現在の帝国の情勢を聞いたプラナはその話を聞いたうえでの自らの不安をギンに対し吐露する。


「兄さん、プレツは帝国との休戦に積極的なようだけど、もし他の国が帝国に対し侵攻を考えて、カイス様に反発する勢力と手を結んでしまえば帝国は……」

「プラナ……」

「カイス様が今一番お辛い時に、私は何の力にもなれないなんて……」

「プラナ、カイスの事はエンビデスとトーラスが支えてくれる。本国にフィファーナ将軍が戻れば状況が良くなるかもしれない」


 カイスを支える者達の名を聞き、プラナがはっとし、声を出す。


「エンビデス宰相、トーラス殿、そうねフィファーナ将軍もいらしたわ」

「それに、バンス将軍の娘の結婚相手とも会った」

「ルード様と⁉」

「彼はあの場で義父であるバンス将軍の仇である俺を殺したかったはずだ。だがそれよりも帝国を守るという強い意志でそれをはねのけた。きっと彼はカイスの力になってくれる」


 ルードとのやり取りをプラナに話し、プラナもルードに関することを話す。


「ええ、それにあの方はピリカ様、バンス将軍のお嬢様が悲しむようなことはしないわ」

「プラナ、カイスにはカイスの、俺達には俺達の、そしてお前にはお前の役割がある」

「私の役割?」

「カイスがエンビデス達と帝国を守り、俺達が魔族を叩く。お前はここの子供達を守ってくれ」


 プラナの役割を示すとともに、更にギンは現在のプラナについて語る。


「アル達はお前が帝国の騎士だったにも関わらずお前を受け入れた。それはお前と接してお前という人間を知ったからだ」

「私という人間……」

「恥ずかしい話、俺はお前と帝国の騎士であった時に戦っていた時はただ奪うだけの奴としか思っていなかった。そんな俺よりも彼らの方がお前という人間をしっかり見ていたんだ」

「でもそれは兄さんやエイムさん達が優しさを私に教えてくれたから……」


 プラナはギンやエイム達より優しさを教えてもらえたからこそアル達に受け入れてもらえたと主張するがギンはまた別の考えを話す。


「カイスと会ったのもそうだが、お前がバンス将軍の娘と仲良くなっているのもお前という人間がそういう人達をひきつけていたんじゃないのか」

「兄さん、ありがとう。私しっかりとここの子達を守っていく」

「全てが終わって、帝国とプレツの国交が持てたら、カイスに会いに行こう」

「うん」


 プラナの返答を聞いて、ギンはプラナに帰還の意思を伝える。


「そろそろ、戻らないといけない。また時間ができたらここに来る」

「いつでも待ってるわ、エイムさんにも声をかけましょう」


 束の間の兄妹の語り合いはギンにもプラナにも安息の時間であった。

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