混乱!ブロッス帝国

 ギン達が帝国領を離れて数日が経った頃、早速帝国内に様々な動きが起きて、カイスの耳に入ってきた。


「ご報告します、カイス様!リット地方と、カカズ地方が領土境界線を巡って小競り合いをしております!このままでは互いの領地を侵食しかねません!」

「くっ、愚かなこんな時に味方同士で争うなど」


 ぼやくカイスにまたしても悪い知らせが舞い込んでくる。


「カイス様!リーズ公国から撤収を試みた我が軍が敵の襲撃にあい、現在、出城を包囲されているとの報告がありました。部隊は援軍を要請しております」

「何故だ?リーズとの戦いは我らが優勢の状態で撤収したはず、それを何故襲撃という無謀な……まさか!」


 カイスが何かに気付くと、エンビデスがその点について話し始める。


「帝国内だけでなく、帝国外まで陛下の死が伝わっておるという事だ」

「ギン達が他国に働きかける前に帝国に対する反攻作戦を試みている国がもう出てくるとは……しかし……援軍は……」

「リーズまでは遠く、援軍は間に合わんだろうし、今国内の兵を減らすと内乱を抑えきれん。気の毒だが……」

「リーズ遠征部隊は見捨てる他ないのか……」


 カイスは国内の内乱を抑えることを優先する為、遠征部隊を見捨てるという苦渋の決断をするが、そんなカイスにたたみかけるように新たな知らせが入って来る。


「カイス様!ディッセル地方が帝国よりの独立を宣言しました!」

「何だと⁉陛下がお亡くなりになってこれ程簡単にタガが外れるとは、奴らは何のために戦ってきたというのだ⁉」

「さらにディッセルは兵を集め、隣のビン地方に侵攻をしております!」

「ビンは我らに従ってくれている、これは明らかな反乱行為だ。トーラス!」


 カイスの呼びかけにトーラスが応じる。


「はっ!」

「すぐに部隊を指揮してビンを救援せよ!助けられる者は助けよ!」

「はっ!すぐに編成を急ぎます!」


 トーラスが部隊編成を試みようとする際にエンビデスも声をかける。


「トーラスよ、我が魔導師団の者達もお前の指揮下に加えてやってくれ」

「よろしいのですか?」

「ディッセルは多くの兵を抱えている。魔術師がいれば戦いが少しは楽になるだろう」

「ありがとうございますエンビデス宰相、それではお預かりします」


 そう言ってトーラスは部隊編成へと向かっていく。


「やはり私では陛下程の器はないのか、帝国をまとめあげるなど……」

「カイスよ、事はまだ始まったばかりだ、今からそんな弱気では困るな」

「エンビデス、すまぬ、私が未熟なばかりにお前にまで苦労をかける」

「私は元より覚悟の上だ、とりあえず態度があいまいな領主達に働きかけてみよう」


 早くも混乱が起きたブロッス帝国、カイスはこの先どのように帝国をまとめあげるのか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る