新たなる魔導書

 帝国内に混乱が予想されるが、反プレツ派の離反とプレツ周辺国家より内政干渉ととられかねないとし、エンビデスは鎮圧協力の申し出を断り、更にギン達に言葉を加える。


「そういう理由でお前達の協力を我々は受けるわけにはいかんのだ、お前達には悪いがすぐに帝国領内より出ることを勧める」

「すぐにか?」

「あまり長居をするとそれだけで協力関係とみなされるかもしれん、急いでくれ」

「仕方ない、それじゃあ行こうみんな」


 ギンが一同に帝国領内からの離脱をはかるよう呼びかけると、エンビデスがエイムに声をかける。


「エイムよ、これをお前に渡しておこう」

「これは?魔導書⁉」

「うむ、そこには魔族と戦う為に役立つ魔法が書かれてある。私では習得に至らなかったがな」

「エンビデスさんでも習得できなかったんですか⁉」


 エイムがエンビデスが習得できなかった魔法があることに驚きを隠せなかったが、エンビデスが言葉を続ける。


「だが、私の魔力をも超える素質を持つお前ならば習得できよう、本当は理論の説明もしたかったが、今はそんな時間はない。自力で習得をしてくれ」

「分かりました、……それから、……やっぱり私にとってのお父さんとお母さんはコッポの村にいるあの2人です。帝国にいた両親は私生んで、私を守ろうとしてくれたけど……、それでも、やっぱり……」

「それでいい、だがお前を命に代えても守ろうとした。それだけは忘れないでくれ」

「はい」


 エイムとエンビデスがやり取りをしている中、ギンがカイスに声をかける。


「カイス、俺達はお前達のことを助けられないが、お前達なら乗り切れると信じている」

「ギン……」

「全てが上手くいき、帝国とプレツや他の国が国交を持てるようになったら、プラナと一緒にお前に会いに来る。プラナはお前にきっと会いたがっているからな」

「ギン、私ももう1度しっかりプラナと話し、私の思いを伝えたいと思っている。だから帝国は守り抜いてみせる」


 カイスの思いを聞いたギンはそっと呟く。


「そうか」


 ギンが呟くとブライアンとウィルがギンの言動に対し、思わずツッコミを入れる。


「ちょっと待て!それだけか⁉」

「ブライアン」

「お前、分かっているのか?プラナとカイスは両想いなんだぞ、互いに思いを打ち明けたら、くっつくんだぞ」

「ウィル、だがそれがプラナの幸せなら、俺は別に……」


 ギンが何かを言わんとすると、更にブライアンとウィルはたたみかけていく。


「さすがに少し物分かりが良すぎねえか?」

「そうだぜ、赤子の時に別れて、やっと再会してこれから兄妹の時間をって時に、妹は嫁入りなんだぞ!少しは思う事がねえのか⁉」

「嫁入り、さすがにそれは気が早いんじゃないのか?」

「すぐは無理でも時間の問題だし、兄として男としてカイスに一言ねえのか⁉」


 ギンの物分かりの良さに思わずツッコミを入れたブライアンとウィルであったが、このような安らぐ時間は久々だと一同が感じていた。

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