伝承に隠されし真実

 ブロッス帝国皇帝ギガスがギン達からの休戦案を受け入れ、帝国とプレツを中心とした反帝国同盟との間に休戦がもたらせしようとされている。


 そんな中、エンビデスはギンに対し、自身が感じた事を伝えようとしている。


「ギンよ、私が感じた事を話す前に聞いておくが、お前は邪龍伝承を知っているか?」

「それならミッツ教団の書物で聞かされた。剣士と魔導士が力を合わせ、魔法剣で邪龍を退治した話だろう。それから事実とは違うかもしれないが、ミックサック団という芝居の一団がその舞台をしていたのをこの目で見た」

「なるほど、それでエイムの魔法を自らの剣に纏わせることを考え付いたわけか」

「あれ自体は賭けのようなものだが上手くいって良かったとしか言えないな」


 ギンの言葉を聞いて、エンビデスがとうとうギンにある事実を告げる。


「お前の話、そしてあの魔法剣で合点がいった。ギンよ、お前はかつて邪龍を退治した剣士と魔導士の末裔である」


 エンビデスの発言に一同は衝撃を受け、ルルーが言葉を発する。


「ギンが⁉でもちょっと待って、プレツにいたはずの2人がどうしてルワールに?」

「順を追って話そう、邪龍を退治した後、その2人は歴史から名が消滅しておる。そしてそれは2人が望んだ事なのだ」

「2人が望んだ?どういうこと?」

「強大な力を秘めた2人は新たな戦いの火種になることを恐れ、ルワールへと渡っていった」


 名もなき英雄の真実。それは剣士と魔導士が望んだことであり、戦いの火種を避ける意味もありルワールへと渡っていったのだ。


「ルワールにはそれほど邪龍の話は広がっておらず、2人は慎ましく暮らし、子供にも恵まれその生涯を閉じたのだ」

「その2人の代ではまだ、ルワール王家には仕えていなかったのね」

「うむ、それから何代か先に魔法剣こそ使えなかったが剣の腕の立つ男が当時のルワール王の目にとまり、王家に仕え、領地を分け与えられた」


 その話を聞いてギンが言葉を発する。


「まさか、その男は……」

「そう、2人の子孫であり、お前の先祖にもあたる」

「邪龍伝承が事実かどうか怪しくなり、その伝承自体を知っている者も少なくなった時に、俺の先祖がルワールに仕えることとなったのか」

「そうだ、そしてギン、お前は偶然魔法剣を習得したものだと思っているようだが、それも必然だったのだ」


 ギンは魔法剣を偶然習得したものと考えており、仲間達もそう考えていたが、それは必然だったと告げるエンビデス、その事実とは?

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