忠義の騎士

 ギンの剣がカイスを斬り、一騎打ちを見事制したのはギンであった。


 カイスは重傷を負い、立ち上がれないと思われていたが、なんとカイスは立ち上がり、ギンを驚愕させる。


「何⁉まだ立ち上がれるというのか?」

「はあっ、はあっ、私は……まだ、戦えるぞ……」

「その体では無理だ。これ以上やってもお前に勝ち目はない!」

「私は……ブロッス帝国の……魔導騎士団長だ……命ある限り……、ぐはっ……」


 気力で立ち上がったものの、やはりカイスの肉体は限界近くまできていた。


 戦闘を部下に任せ、トーラスと1人の騎士がカイスの元に駆け寄る。


「カイス様!ご無事ですか⁉」

「トーラス、心配はいらん。私は……」

「何をおしゃっているのですか!その体では戦うことはできません。カイス様は1度お退きください」

「何?」


 トーラスはカイスに対し、退くよう進言し、さらに強く呼びかける。


「カイス様の役割は陛下と帝国をお守りすること。今ここで倒れてはなりません!」

「トーラス……」

「奴らは我らが食い止めます」

「すまぬ……」


 カイスがトーラスの進言を受け入れると、もう1人の騎士が言葉を発する。


「さあ、カイス様、離脱を。トーラス様、カイス様をお願いします」

「何?私もここで奴らを食い止める」

「いえ、カイス様の役割が陛下と帝国をお守りすることなら、トーラス様はカイス様をお支え下さい。プラナ様がいないならなおの事です」

「分かった。ここは任せるぞ」


 トーラスの言葉に騎士は返答をする。


「お任せを」


 騎士の言葉を聞き、カイスの撤退の補助にトーラスがのぞむ。


「よし、私の従士とカイス様の従士は城内に退くぞ。カイス様をお連れしろ」

「はっ!」


 カイスは従士達に運ばれて、城内に退いていく。トーラスも敵の追撃を気にしながら慎重に城内へと入城する。


「よし、奴らを食い止めるぞ!」

「おーーー!」


 残った将兵とギン達の戦闘が再開され、長く奮戦するが、戦いそのものはギン達の勝利に終わる。


「終わったか……」


 呟くギンに対し、ブライアンが声をかける。


「ギン、あのカイスってやつは、なんていうのかめんどくせえっていうか、バカっていうか……」

「ブライアン、あいつは恩義と忠義に生きている。それがあの重傷でも立ち上がったってことなんだろう」


 ギンの言葉を聞いて、ヨナが口を挟む。


「プラナがかわいそうだよ。あんな、自分の事を見てくれないような奴に惚れちまってさ、下手な未練を残してやらないのがかえってプラナの為かもよ」

「それは俺達が決める事じゃない、俺は命を奪う事もやむを得ないと思ったが、結果的にあいつが生き残った。それだけだ」

「治療には時間がかかるだろうし、今の間に城に入って、決着をつけようよ」

「そうだな、俺達はその為に来たんだ」


 カイス達魔導騎士団に勝利したギン達。いよいよ皇帝ギガスとの激突が近づいている。

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