決闘の果てに

 プラナが得意の火の魔法を応用させた煙の魔法を使用し、ギンを翻弄する。プラナの気配を察し攻撃を止めることに成功したものの、ギンには魔法に対する防御手段が乏しく、剣技のみの勝負に持ち込む方法を思案する。


「ふっ、私を甘く見ていた結果、貴様は死ぬのだ」

「お前の魔法の使い方の上手さは確かなようだ。だが目くらましだけで俺に勝てると思うな」

「減らず口を」


 そう言うとプラナは再度魔法を放つ。今度は火球を放つ。ギンはそれに合わせ魔法剣を発動させ、火球を防ぐ。


 すぐさまプラナは煙の魔法を放ち、再度ギンの目くらましをするが、ギンは煙に巻き込まれないよう咄嗟に後退する。


 そのギンの隙を突き、再度プラナは火球を放つ。かわすのが精一杯のギンに火球を更に放つ。


 魔法剣で防ぐことに成功するが、今度はプラナが剣でギンに斬りかかる。


 ギンは咄嗟に剣を手から離し、ギリギリまでプラナの剣を引き付け、プラナの両手を掴む。


「何⁉くっ、動かん」


 ギンの腕力が勝っており、プラナはギンの腕を振りほどけない。そのままギンはプラナを投げ飛ばす。


 ギンに投げ飛ばされ、身体に衝撃が走り、すぐには起き上がれないプラナの前にギンが剣を持って近づいていく。


 その様子を見ていたヨナが近くにいるウィルとミニルに声をかける。


「終わったね、ギンの勝ちだよ。もうあいつに対抗する手段はない」


 ヨナの言葉を聞いてミニルが自身の考えを話す。


「本当にこれでいいの?確かにあの人は帝国軍だけど、ギンさんの妹なんでしょう、このまま殺すのを黙って見ているなんて……」

「今なら殺さずに捕虜という名目で俺達が保護できればあるいは……」


 ウィルとミニルはなんとかギンに妹を殺さずに済む方法がないかを訴えようとするが、ヨナはそれを一蹴する。


「無理だよ、生かしたところで、あいつの中にギンに対する憎しみがあるんじゃ、何度だって殺そうとする。それにあたし達がギンの覚悟に水を差しちゃだめだ」


 しかし次の瞬間、カイスとトーラスがプラナの元に動く素振りを見せる。


 そのカイス達の前にブライアンとムルカが立ち塞がり、カイスがブライアン達に声をあげる。


「貴様ら!そこをどけ!」

「どけだと?決闘を認めておいて、その決闘に水を差すなんて騎士にあるまじき行為なんじゃないのか」

「その通りだ!我らはギン殿の覚悟を無駄にはせん。ここを通りたくば我らを倒してから行くがよい!」


 ブライアン達がカイス達の足止めをしている間にギンはプラナに対し、剣を向け切り伏せる。


 プラナは条件反射で目を閉じるが、自身が斬られていないことを不思議に思い目を開けると目の前にギンの剣が地面に刺さっているのが見える。


 ギンは剣を手から離し、言葉を発する。


「ブライアン、ムルカ殿、すまない……俺には、俺には妹は斬れない。例え帝国にいても俺にとってはもう……」


 ギンの言葉が聞こえたエイムは一言だけ呟く。


「ギンさん……」


 エイムにとってはギンが妹を殺さなかった安堵の気持ちもあるが不安も大きかった。そしてすぐにその不安が的中してしまう。


「ふん、最後の最後で甘さを見せたな」


 プラナはギンに対し剣を突きつけていた。妹への思いがギンの戦意を奪うが、その妹は容赦なく兄に対し刃を向ける。


 もはや憎しみは止まらないのか?

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