懐かしい思い
エイムはギンに対し、ブロッス帝国魔導騎士団のプラナがギンの妹の可能性があることを話す。
思わぬ発言にギンは戸惑いつつもエイムに尋ねる。
「エイム、いきなり何を言い出すかと思えば、あのプラナが俺の妹かもしれないだって?何故そう思ったんだ?」
「最初の違和感は私を連れ去る為に現れた時にギンさんとあの人が同時に魔法を発動させて魔力の波動がすごく似ていたことです。もちろん、他人でも似ることはあるので、偶然かもしれないとは思いました」
ギンはエイムの話を黙って聞いており、エイムは話を続ける。
「私が帝国軍に拘束されている時にあの人が養子に出された話を聞いて、単なる偶然にしてはでき過ぎていると思ったんです。だから……」
「エイム、お前の話はいくらなんでも突拍子が無さすぎる。それで俺に信じろというのは無理がある」
「それは……でも……」
「それにお前の言うように例えあいつが俺の妹だったとしても、あいつが敵対する姿勢を崩さない限り戦うしかない。場合によっては……」
ギンの言わんことを察したエイムがギンより先に言葉を放つ。
「命を、奪うんですか?」
「そうだ……これは戦争なんだ、俺は今でも休戦をしたいとは思っている。だがそれがかなわないならやむを得ない」
「それは分かります、でもどうしてそれをそんなに苦しそうに言うんですか?」
「何⁉俺が苦しそう?」
エイムはギンの表情の苦しさを察し、それをギンに告げる。そしてエイムは自らが思った事を話す。
「ギンさん、私の話が信じられないなら、そんなに苦しそうにするわけがありません。ギンさんも何か思う事があるから、そんなに苦しそうなんじゃないんですか?」
「それは……」
「私はこの話を最初は黙っているつもりでした、ギンさんが苦しい思いをするし、そんな顔を見たくなかったからです。だけど……」
次の瞬間エイムの瞳から涙が溢れ、ギンに言葉を放つ。
「もし、ギンさんか私達があの人の命を奪って、後で妹さんだと分かればもっと……辛い思いをすると思ったん…で、す、だから……」
エイムの言葉を遮り、ギンが言葉を放つ。
「エイム、お前の気持ちは分かった。だから俺の本当に思った事を言わせてくれ」
「はい」
「俺はお前みたいに魔力を感知することはできない。だが俺はどこかあいつに懐かしさを感じていた」
「え?」
エイムの訴えを受け、ギンは自らが思った事を打ち明ける。
「最初に感じたのはスップであいつと剣を交えた時だ。指導者は違うはずなのに兄さん達と剣の稽古をしていた時のことを思い出した」
「そうだったんですか」
「だから余計に俺もあいつを敵だと必死で思うようにしたんだ」
「今思えば、敵でも敬意を示すギンさんがあの人に対しては敵意むきだしの言葉が多かったように思います」
ギンはプラナに対し、懐かしさを感じていたが、その思いを打ち消すように敵意を常にあらわにしていたのだ。
今のギンのプラナに対する本当の思いは?
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